テックポエム:014 - ハロウィンだしセキュリティの話をしよう!
はじめに
10月といえば「サイバーセキュリティ国際キャンペーン」ですね!
これはサイバーセキュリティに関して啓蒙活動を10月に行おうという国際的な呼びかけでアメリカをはじめ多くの国が参加しており、日本も参加しています。まあ、日本は2018年からやってるか謎ですが。。。 どちらかというと、アニメとコラボしながら2-3月にやってる強化月間の方が日本ではなじみ深いのかもしれない。
まあ、それはさておきそう言う日なので10月になんか話をしようと思い気が付けばハロウィンになっていましたが、ハロウィンでセキュリティの話というのもたまには良いでしょう。
というわけで以下のスライドを使って配信をしました。
せっかくなのでブログにも軽くまとめておきます。
サイバーセキュリティとは?
まずはセキュリティとはなんでしょうか? ISO2700やJIS規格その他もろもろでは以下のように定義されてますよね。これはマジでテストにでます。
機密性はなんとなくそれっぽい。完全性は言葉になじみがないと思いますが読めば改ざんとかなのでセキュリティっぽいですよね。ちょっと意外に見えるのが可用性です。これはパフォーマンスの話に思いがちですがDDOSでサイトダウンがセキュリティ攻撃として認識されてるようにセキュリティの基礎的な要素となっています。
では、サイバーセキュリティとはなんでしょうか?
実は、この手の用語にしては珍しく定義があいまいないんですね。あいまいというか文書によって違うというべきでしょうか。これは不便なので統一の動きがあるのですが未だ果たせず。
基本的には情報セキュリティとの使い分けが肝になるわけですが「実際的な攻撃への防御や対策がサイバーセキュリティ」「リスク管理や監査が情報セキュリティ」という緩い区分でも大きくは間違わないです。
重要なのは視点の違いです。これどちらかをどちらかの箱に入れようとすると困るものも結構あります。同じ対象をサイバーセキュリティと情報セキュリティで扱うので。今話題にしてるのはどっちの視点が主かな? という点だけ押さえておけば後は多少曖昧でも良い気がしますね。もちろん、組織を作ったり社内規約を作ったりする時には無いと困りますが通常は大丈夫かと。
10年間でのセキュリティ攻撃の変化
IPAの情報セキュリティ10大脅威から2020版と10年前の2010版を比較してみました。
面白いのはWebアプリケーションへの攻撃が比較的減っている事です。これはFWが充実したりセキュリティコーディングの知見もたまったりSASTやDASTが一般的になった証拠だと思います。 一方で標的型攻撃などが増えています。これは私見ですがスクリプトキディのようなアマチュアではなく、お金を稼ぐプロに代わったため身代金や依頼料を取りやすい標的型攻撃が増えてるのではないでしょうか。いずれにしても変わらないことは攻撃者は常に弱いところを狙ってくるのでしっかりと防御していきましょう。
2010年 | 2020年 | |
---|---|---|
1位 | 変化を続けるウェブサイト改ざんの手口 | 標的型攻撃による機密情報の窃取 |
2位 | アップデートしていないクライアントソフト | 内部不正による情報漏えい |
3位 | 悪質なウイルスやボットの多目的化 | ビジネスメール詐欺による金銭被害 |
4位 | 対策をしていないサーバ製品の脆弱性 | サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃 |
5位 | あわせて事後対応を!情報漏えい事件 | ランサムウェアによる被害 |
6位 | 被害に気づけない標的型攻撃 | 予期せぬIT基盤の障害に伴う業務停止 |
7位 | 深刻なDDoS攻撃 | 不注意による情報漏えい(規則は遵守) |
8位 | 正規のアカウントを悪用される脅威 | インターネット上のサービスからの個人情報の窃取 |
9位 | クラウド・コンピューティングのセキュリティ問題 | IoT機器の不正利用 |
10位 | インターネットインフラを支えるプロトコルの脆弱性 | サービス妨害攻撃によるサービスの停止 |
最近のセキュリティ対策のトレンド
一つ一つを話すと長くなりますが、個人的に最近のトレンドでは以下の視点が重要だと思っています。
便利なセキュリティ
セキュリティといえば「めんどくさい」というイメージがあり、抜け道が回避され結局セキュリティ対策が無意味なものになりがちです。そのためなのか最近は「利便性が高くしかもセキュリティも高い」というソリューションが増えたと思います。
SSOやパスワードレスはその典型でユーザはパスワード入力の呪いから解放されます。ゼロトラストもそうですね。ゼロトラストに関しては別途まとめてるので以下の記事や動画も参考にしてください。
クラウドとセキュリティ
パブリッククラウドは何となくセキュリティ的に危ない気がして個人情報を置くのに懸念がありますよね? でもそれは多分気のせいです!
実際のところクラウドであっても適切に設定していればオンプレと同等以上のセキュリティになりますし、適切に設定されないのはロール管理が失敗してるかオペレータのスキルが極端に低いかです。ふつうDMZのFWの設定変更を気軽にやったり、みんなにその権限付与したりしないですよね? そういう話です。
クラウドから情報流出したというニュースは基本的にはクラウドベンダーのセキュリティが突破されたのではなくユーザの設定ミスに起因します。 ただし、クラウド側もその点に関しては気にしており「Security IN the Cloud」という形で、IAMのような基本的なものからCSPMやCWPのような先進的なものまで幅広くセキュリティツールをクラウドの機能として組み込んでいます。
基本的にセキュリティというかインフラは規模の経済ですから、1社で買うよりはメガスケーラのクラウドベンダーが構築/購入してその費用を分配したほうがずっと安いのです。彼ら自身も大量の攻撃を受けるプレイヤーなので、その対策には膨大なコストを支払っています。そこに通常の会社が追いつくのはそれなりに資金がいるのでは? と考えています。
自動化とAI
重要なキーワードは「継続的な実行」と「コンテキスト認識」です。まあ、運用系と同じですね。特に前者は開発や運用のパラダイムを変えますし、後者は大幅な省力化によりSOCの民主化を果たす可能性があります。
まとめ
特筆すべき点としてはユーザは透過的に使えるようになったりむしろ利便性があがるのが今のセキュリティのトレンドですが、ツールが非常に増えてしまって管理者が大変です。大量の種類のセキュリティツールを管理しないといけないので、適材低所も大事ですがある程度は大きなベンダーにまとめてしまう事で契約や管理をシンプルにするのも一つの手ですね。クラウドベンダーがどんどんセキュリティベンダじみて来たのでそれも活用できるかと。
それではHappy Hacking!
Markdownで作ったメモを簡単にチケット風のタスク管理ができる「task.Notes」を開発したよ!
はじめに
Markdownを使って書いたメモを手軽にチケット風のUIでタスク管理できるtask.Notes (タスクドットノート)を開発しました! tasknotes.nklab.dev
私は結構、メモや議事録を整理しながら個人作業用のタスクを作って管理をするので、そういうのにはまるタスク管理ツールが欲しくて作りました。JIRAやREDMINEのようなチケット管理は便利ですが、ちょっと個人のタスクを管理するのには面倒というかチケット作成の作業が重いんですよね。
task.NotesはまずMarkdownでメモを書き、それを簡単なルールに合わせることで自動的にチケット風のUIで管理できるようにしています。なので、議事録やメモを整理しながら軽快にタスクを作りたい人に最適です。
■ 動作イメージ
開発のモチベーション
一言でいえば「MS Wordより便利なタスク管理システムが欲しい!」という事です。
はい。言いたいことは分かります。でも待ってほしい。ちゃんと理由はあるんです。
元々、備忘録というか「後でこれする」的な内容をMTG中や思いついたはしからTODO化してたのですが、Redmineでは重いしVS Codeでは利便性が悪いしと思っていました。それをRebuild.fmの配信で誰かがG-Suiteでタスク管理をしてる的な話をされていたので、代わりにMS Word (+Sharepoint) を試してみたところ、ブラウザから使えて自動保存ですし見出しとアウトラインレイアウトで一覧性は見れますしスクショを直接貼り付けたりとなかなかメモ帳兼タスク管理ツールとして快適でした。
ただ、やはりWordはタスク管理ツールでは無いので問題点は山のようにあり、もうちょっとチケット的に管理できたらなぁ、とかいくつか不満もたまっていました。そんなおりにたまたまGoogleの「Tables」を試してみたところそれ自体も便利だったのですが、なによりUIを切り替えるという発想にインスピレーションをうけ、ちょうどMarkdown EditorのSimpleMDEを別プロダクトでも触っており作れそうだったので「試しに作ってみるか!」と始めたのが本プロダクトです。
そのためこのツールは「メモを思いついたはしから書いて後から整理しながら個人向けのチケットにする」「自身の作業記録的に一つのテーマに積み重ねて書いていく」という用途に特化しています。プロジェクト管理とか複数人での利用とかは今のところサポートしてないのでご注意ください。
使い方
まず、大きく分けて「Editモード」と「Ticketモード」があります。この二つは単に見た目を切り替えているだけで、内部のデータは同じものを見ています。
Editモード
最も基本となるUIです。SimpleMDEをベースにしたMarkdownエディタです。半WYSIWYGなので書いたそばから見た目も変わります。また、元のSimpleMDEを少し拡張して画像を貼り付けると自動でアップロードして埋め込むようにしたので、スクリーンショット等をコピペすると色々と捗ります。
基本的にただのMarkdownですが、特定の記法に従うことでタスク化する事が出来ます
#
のh1要素はタスク名になる## body
のマジックワードでそれ以降が本文になる## meta
のマジックワードを#
と## body
の間に挟むことで期日やステータスを記述できる。このセクションは省略可能- メタセクション内に書けるメタ情報は以下の2つ
due_date:
status
# ここにタスク名 ## meta - due_date:2020-12-31 - status:Closed ## body ### ここにコンテンツ。 ![image.png](https://storage.googleapis.com/ajfgeay8733/image/bb0c1b12-b2bc-4443-bbe3-9dd12870a2c1.png) # タスク2 ## body * アイテム1 # タスク3 ## meta - due_date:2020/12/31 ## body ここにコンテンツ。
なおテキストは自動保存なので特にSaveなどのオペレーションは不要です。
Ticketモード (一覧)
EditモードのMarkdownを自動的にJIRAやRedmineのようなチケットで表示します。
一覧画面では見出しをクリックすることで項目ごとに並べ替えをしたり、レコードをドラッグ&ドロップすることで移動させたりすることができます。
EditモードとTicketモードでは見てる値は同じため、こちらで順番を変えるとMarkdown側の中身も同時に変更されます。
Ticketモード (詳細)
Ticketモード (一覧)のリンクをクリックすると詳細ページに遷移します。
詳細ページではタスク毎の詳細を確認したり編集したりできます。
特に、ステータス部分はクリックする事で「Open」「In Progress」「Close」の3つのどれかになります。
今後の予定
作ったばかりで色々機能不足ですが当面以下のあたりを強化しようと思います
まとめ
私のようにメモや議事録をベースに自分の個人タスクを管理したい人がどのくらいいるか次第ですが、そういった人にはかなりはまるサービスなんじゃないかと思いますので、良ければぜひ使ってみてください。
まだとりあえず作ったレベルなので色々機能不足な面やUIがイケてないところもあるので、徐々に改修していきたいと思います。
それではHappy Hacking!
テックポエム13 - そろそろ5Gについて語っておくか
各キャリアとも5Gが出そろってきました。 5Gは「大容量、低遅延、多接続を実現し我々の生活を変える!」 と言われる技術ですが、そもそも何なの? 本当にその3つを同時に実現できるの? ってことに関してはあまり語られてないと思うので、今回思いっきり語ってみました。ささら白雪さんも凸ありがとうございましたー。
5Gに関しては私自身もよく分かってなかったので今回結構勉強しながら資料を作りましたが、どういうものかがわかってとても良かったと思います。
特に5Gというとやはり大容量ばかり目立ちますが、実際はそれよりも「コアネットワークのレイヤリング」によるスマホ向け、IoT向けといった味付けの異なる複数のネットワークを運用できるようになったことが核心だと理解できました。むしろ、大容量/低遅延/多接続は原則同時に満たせない感じですね。
配信に使った資料はこちらです。
アジェンダ
- そもそも5Gとは? 何が凄いの?
- 5Gと移動通信システムの 歴史
- なぜ大容量なのか?
- なぜ低遅延なのか? + MEC
- なぜ広帯域なのか?
- ローカル5G vs Wi-Fi
- MVNOとVMNO
- 5Gがもたらす未来
まとめ
歴史的なところから含めて携帯網の変化や5Gの特徴、エッジコンピューティング (MEC)が5Gにもたらす意味に関して話しました。
特に、大容量、低遅延、広帯域のそれぞれの技術要素がわかったので「ミリ波を使わない場合の5Gでも低遅延なのか?」みたいな点がわかったのは大きいですね。4G周波数帯転用とか意味がないと思ってましたが、そうでもなさそうです。
また、ローカル5GやVMNOは用途は限定されるかもしれませんが、従来のMVNOと比較してもとても面白い技術です。この辺は5GがvRANやNVFなどを利用した仮想ネットワークという特性が最大限に活かしている所だと思うので、新しいビジネスが生まれるかもしれませんね。
今のところキラーコンテンツが不在で個人的にはAR/VRのアクセラレータとしてのポジションを期待するぐらいなのですが、IoTが普及する鍵ではあると思うのでそのあたりが来年以降どうなっていくか楽しみです。
なお、配信が2時間と非常に長くなってしまったので、もっと圧縮して要点のみを説明する動画も作ってみたいと思います。
それではHappy Hacking!
テックポエマーのWeekly News! - 2020/09/13 - 数千万が0円になる開発手法
バーチャルテックポエマーの紅月みすずです。今週気になったITネタについて話す動画です。
今週はMicrosoft IgniteがありACSというTwiloのようなサービスやセキュリティ機能がMicrosoft 365 Defenderとして大幅に強化されたました。Security Centerなど既存機能がリブランドしたとともにEDRがMac/LinuxやAndroid/iOSとクロスプラットフォームに対応しました。同じくSecurity CenterのCSPM/CWP機能も強化されるとともにやAWS/GCPに対応したのは非常に大きいです。
他にもSaaSを組み合わせて数千万円のシステムを0円で組む話やユニケージ開発についてや、10日で一気に大人気になったZennの話題に関して話しました。
スライド
テックポエマーのWeekly IT News! - 2020/09/27 - Speaker Deck
今週のサマリ
動画中の引用記事/参考記事
テックポエマーのWeekly News! - 2020/09/13 - シリコンバレーの地殻変動
バーチャルテックポエマーの紅月美鈴です。今週気になったITネタについて話す動画です。
今回はコロナの影響により在宅勤務が増えるならVMWareが給与を減らしたり、Googleが会社の近くに住宅街を作ろうとしたり、Amazonが新規に3万に雇った話をしました。
他にもLINEで住民票の取得が出来るサービスに政府が待ったをかけたニュースも注目です。Bot Expressの言い分も良く分かり賛同すると共に実はマインバーカードはスマホでも読み込めるとか政府側も利便性は頑張ってるのでお互いの落としどころが出来ると良いですよね。やはり電子政府は今後もっと重要になってきますし。
他にもGentooがアップデートしたりAmazonのコンテナ特化OSのBottlerocket, HuaweiのIoT向けマイクロカーネルOSのHarmonyなどOS関連の話題も個人的には気になったところです。
TypetalkさんがEC2インスタンスをARMベースのAWS Graviton2に変えて性能もコストも改善したという話もありました。これは今後のArmチップへの移行を加速させるかもしれませんので、今後に注目ですね。
スライド
テックポエマーのWeekly News! - 2020/09/13 - シリコンバレーの地殻変動 - Speaker Deck
今週のサマリ
- シリコンバレーの住宅事情。WFHと給与。
- 「LINEで住民票」に国が“待った”
- 「よくあるクソフォームだ!」がバズる
- LFS, Gentoo, Amazon, Huawei, 様々なOSの登場/アップデート
動画中の引用記事
apps.apple.comGoogle Cloud Next'20 総括!
- 膨大なセッション
- 大量の新機能、でも。。。
- アップデート振返り
- エンタープライズへの利用の拡大
- スケールするインフラを超えてスケールするオペレーションへ
- Cloud RunによるGCPサーバレスの再構築
- Multi Cloud as Google Cloud Platform with Anthos
- まとめ
ついに9週間にわたって発表のあったCloudNextの振替えり配信も終了しました!
折角全部見たので、全部を見たうえでの振り返りや感想の配信も行いました。
配信に使ってるスライドはこちら。
Google Cloud Next'20 総括! - Speaker Deck
さて、配信が今回で喋りたいことは喋りきろうという気持ちでやったので2時間を超えるというクソ長動画になってしまったので、 一応ポイントだけブログの方にも書いておきます。
膨大なセッション
今回は9週間あっただけあって非常に多くのセッションがありました。毎週20から60セッション近く増えてましたからね。良くそれだけネタがあるものです。一つが大体25分で中には30分や40分の動画もあるので総時間はゆうに100時間を超えます。 私も最終的に平均して半分くらいは見てると思うので50時間くらいは視聴に使ってますね。。。 普段のカンファレンスではどんなにたくさんの発表があっても被ってしまっているので取捨選択を泣く泣くするわけですが、今回は良くも悪くもそれが無いというのが大きなポイントでしたね。この物量は他のオンラインカンファレンスにはないものですね。。。
大量の新機能、でも。。。
これだけセッションがあるので私が気になったものだけ拾っても非常にたくさんのアップデートがありました。
ただ、まったく新しい新プロダクトはあまりなくBigQuery Omni, BI EngineとAPI Gatewayくらいかもですね。あとは機能強化/改善がメインになります。ただこれは今回の発表がしょぼいという分けでは無く、ポートフォリオがそろってきて成熟するフェーズに入ったのだと個人的には思っています。 AWSに比べるとまだまだ少ないですが、ここ数年で必要なプロダクトは一気に揃ってきたのでGAが増えたり着実とした進化は悪い流れではないのかな、と。
アップデート振返り
本当に最小限の最小限ですがアップデートの振り返りです。Omniは実際の利用機会はさておきGCPがマルチクラウドを本気で考えている、そしてどう展開しようとしているかが分かる非常に重要な発表だと思います。あと、ストレージは名前が変わって種類も増えたのでそこだけ注意ですね。
エンタープライズへの利用の拡大
今回はGoogleが本気でエンタープライズ領域を取りに来ているという意気込みが凄かったです。 事例紹介で金融系を中心に医療や政府系など規制業界での利用拡大をアピールしていましたし、インダストリークラウドやメインフレームなどの巨大な市場からの置き換えも狙っています。このあたりが取れれば実は6%以下と知名度のわりにはAWSやAzureと比べても圧倒的にシェアが少ないという事実を巻き返せるでしょう。
また、エンタープライズ領域のための重要な更新の一つがBareMetalサービスです。
これはセキュリティ観点でのノイジーネイバー対策やパフォーマンス対策のために用意されたインスタンスではありません。ハイパーバイザーを取り払い各ベンダーが認証しているハードウェアを利用することで、SAPやOracleそしてなによりVMWareといった既存のオンプレミスで動いているワークロードをそのまま移行するための仕組みです。
特に、VMWare Engineは既存のワークロードをそのまま持ってきつつ、GCPのサービスとの通信は出来るのでGCEやコンテナに移行するよりずっと簡単にマイグレーションが出来ます。
GCPにレガシーワークロードを持ってくるだけではなく、あとで書きますがAnthosによってオンプレミスや他社クラウドを運用する方法も中核サービスの一つです。
こうした「マイグレーション」という分かりやすいエンタープライズを見込んだ機能以外にも「顧客の声を聴き」機能の改善をはかるという事を強調していました。GCPはAWSなどと違い「僕(Google)の考えた最強のインフラ」をパブリックに展開しているという側面が強いため、独自の考え方を適用するものが結構多いです。Google Wayに乗れば非常に便利だけど、既存のワークロードを持っていくのは簡単ではないという事ですね。
今回はそう言った部分にも多くの改善が入っています。例えばOSの自動アップデート機能等はコンテナをバリバリに使ってCOSを使うならさほど重要ではありません。元よりWindowsや通常のLinuxディス鳥よりずっと簡単に出来るのです。こうした機能を付けることで既存のワークロードに対して運用コストを下げる事が出来るのでGoogle Wayから普通の道への歩み寄りをしていると言えるでしょう。こういった改修は他にも点在していたと思います。
スケールするインフラを超えてスケールするオペレーションへ
クラウドといえばインフラのスケールですが、AIをテコにしてオペレーションの自動化を行いスケールする運用というものも今回のテーマにあったかと思います。 これはセキュリティやITオペレーションといったシステムサイドのオペレーションも、カスタマーセンターや経理処理といった業務側のオペレーションのいずれに対しても同様です。
システムに対してはActiveAssistという形でセキュリティやオペレーションをスケーラブルにするという事を強調していました。個人的なポイントとしては「自動化」ではなく「スケールさせる」と言ってることです。つまり自動化は手段にすぎず、目的は規模が大きくなっても継続可能な運用体制の構築という点を強調していると言えます。
ビジネス側に対してはコンタクトセンターAIとドキュメントAIが象徴できてした。実はコロナの影響で問い合わせは数倍から十倍という単位で来ている業界はいくつもあります。そのためカスタマーセンターやバックオフィスをスケールさせる事は重要な課題なのです。Googleだけではありませんが、ここに多くのサービスが展開されていると思うのでこれを機にしっかり入れて苦難をチャンスに変えるのが大事だと思います。
Cloud RunによるGCPサーバレスの再構築
BorgベースのGCPテクノロジーをDockerに変更していくのも大きな流れだと感じました。今回は特にCloudRunがGAになり2008年に最初のGCP製品として登場したGAEを12年振りに置き換えるとこが出来ます。また、Event for CloudRunとWorkflowの登場によりFaaSであるCloud FunctionsもCloudRunで置き換えることが出来るようになります。
これは元々Googleの内部技術であったBorgをより一般的なDocker等に置き換える事でK8s上で実行できるようにするという事です。これはGoogleのマルチクラウド戦略上、非常に重要な要素となります。
Multi Cloud as Google Cloud Platform with Anthos
現状多くのクラウドベンダーはハイブリッドクラウドとしてオンプレミスのデータセンターとの連携を強化しています。これはそもそも現時点で全面的にクラウドにしてない会社は何らかの理由でオンプレミスを直ちに撤去出来ないので、それらを取り込むためにはハイブリッドクラウドを推し進めるしかないからです。
加えてGoogleは6%以下というシェアの低さから多くの利用者が別なクラウドをすでに使っている可能性が非常に高いです。そのため、彼らはマルチクラウド戦略を取らざる得ず、今回のセッションの中でもひたすらそこを繰り返していました。
そしてGoogleのその回答はAnthosです。
Anthosを使うことで複数クラウドのK8sを管理できるのでワークロードを一括して管理できる、と考えていましたがそこはどうも要素の一部にすぎないようです。
Anthosはワークロードを一括して管理できるというだけではなく、Googleのマネージドサービスの実行基盤でもあります。GKE on PremはもちろんですがCloudRunが動作するのでPaaSとFaaSがカバーされます。他にもAI関連もAnthos上で展開されますし、キーノートにも出たBigQuery Omniは虎の子のBigQueryすらマルチクラウドで動かす技術です。
このようにAnthosは我々ユーザのワークロードの管理/運用という以上にGoogleのマネージドサービスのデプロイメント先という特性があります。そのため、先ほども書いたようにGoogleはBorgベースの既存テクノロジーをGKEで動作可能なDockerベースの技術に置き換えているのです。
これが推し進められると、将来てきには「Anthos IS GCP」と言える状況になるんじゃないでしょうか? これはまさにGoogleが「Datacenter as a Computer」としてDCを一つのコンピュータのように扱えるようにしたのと同様に、オンプレミス/他社クラウド/GCPをひっくるめて一つのGCPとして管理しようとしてるのではないかと考えています。
そのような状況下では既存のGCPはGCP Optimized Infrastructureという形になり、例えば現在のBigQuery OmniのようにAWSで動かす事は出来るがGCPで動かせばより高速に動作する、という状況になるんでは無かろうかと。ちょっとワクワクする感じですね!
まとめ
配信およびこの解説の後半は完全に私の妄想記事ですが、まああながち外してないのではと思います。Google自身はマルチクラウドを推し進めざる得ない立場なのでその上での戦略となればこれに近しいものになるでしょうし。AzureとかOCIとか他の会社の動きも含めて今後どうなるのか楽しみですね。AWSは王者だからそこまでドラスティックな事は考えないでしょう。たぶん。
いやー、それにしても本当に長かったです。数えてみたら配信数は20個になってましたし。。。 でも、きっとこうして配信というアウトプットの場を作らなければきちんとセッションを聞かなかったと思うので、いい機会にはなりました。今後もこういうイベントがあったときには振り返り配信をしていきたいですね。
それではHappy Hacking!
テックポエマーのWeekly News! - 2020/09/06 - With コロナ
バーチャルテックポエマーの紅月美鈴です。今週気になったITネタについて話す動画です。今回は結果としてWithコロナなネタが多かった気がします。
Zoomの新機能、Clusterの新アバターやOclusQuest2の噂、K3s、Amazon Freshを中心に話しました。しかし、来週のOculus ConnectがFacebook Connectになったのは仕方が無いけど少し寂しいですね。でもイベント自体は本当に楽しみです! あと、引用にも貼ってますがSpatial のデモ動画は必見です! まだの人はぜひ。
Rancher LabがやっていたK3sが正式にCNCFに入ったのも大きいですね。どうしてもRancher 単独のプロジェクトだとK8sのパチモン感があったので公式になったのは大きいです。今後加速していくIoTへのK8s対応の大きな旗印となるかと思います。
また、今回はgesopotaさんに凸っていただきました。ありがとうございましたー。
利用したスライドはこちらに上げておきました。