Google Cloud Next'20 総括!

ついに9週間にわたって発表のあったCloudNextの振替えり配信も終了しました!

koduki.hatenablog.com

折角全部見たので、全部を見たうえでの振り返りや感想の配信も行いました。

www.youtube.com

配信に使ってるスライドはこちら。

Google Cloud Next'20 総括! - Speaker Deck

さて、配信が今回で喋りたいことは喋りきろうという気持ちでやったので2時間を超えるというクソ長動画になってしまったので、 一応ポイントだけブログの方にも書いておきます。

膨大なセッション

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今回は9週間あっただけあって非常に多くのセッションがありました。毎週20から60セッション近く増えてましたからね。良くそれだけネタがあるものです。一つが大体25分で中には30分や40分の動画もあるので総時間はゆうに100時間を超えます。 私も最終的に平均して半分くらいは見てると思うので50時間くらいは視聴に使ってますね。。。 普段のカンファレンスではどんなにたくさんの発表があっても被ってしまっているので取捨選択を泣く泣くするわけですが、今回は良くも悪くもそれが無いというのが大きなポイントでしたね。この物量は他のオンラインカンファレンスにはないものですね。。。

大量の新機能、でも。。。

これだけセッションがあるので私が気になったものだけ拾っても非常にたくさんのアップデートがありました。

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ただ、まったく新しい新プロダクトはあまりなくBigQuery Omni, BI EngineとAPI Gatewayくらいかもですね。あとは機能強化/改善がメインになります。ただこれは今回の発表がしょぼいという分けでは無く、ポートフォリオがそろってきて成熟するフェーズに入ったのだと個人的には思っています。 AWSに比べるとまだまだ少ないですが、ここ数年で必要なプロダクトは一気に揃ってきたのでGAが増えたり着実とした進化は悪い流れではないのかな、と。

アップデート振返り

本当に最小限の最小限ですがアップデートの振り返りです。Omniは実際の利用機会はさておきGCPがマルチクラウドを本気で考えている、そしてどう展開しようとしているかが分かる非常に重要な発表だと思います。あと、ストレージは名前が変わって種類も増えたのでそこだけ注意ですね。

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エンタープライズへの利用の拡大

今回はGoogleが本気でエンタープライズ領域を取りに来ているという意気込みが凄かったです。 事例紹介で金融系を中心に医療や政府系など規制業界での利用拡大をアピールしていましたし、インダストリークラウドやメインフレームなどの巨大な市場からの置き換えも狙っています。このあたりが取れれば実は6%以下と知名度のわりにはAWSやAzureと比べても圧倒的にシェアが少ないという事実を巻き返せるでしょう。

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また、エンタープライズ領域のための重要な更新の一つがBareMetalサービスです。 f:id:pascal256:20200914162204p:plain

これはセキュリティ観点でのノイジーネイバー対策やパフォーマンス対策のために用意されたインスタンスではありません。ハイパーバイザーを取り払い各ベンダーが認証しているハードウェアを利用することで、SAPやOracleそしてなによりVMWareといった既存のオンプレミスで動いているワークロードをそのまま移行するための仕組みです。

特に、VMWare Engineは既存のワークロードをそのまま持ってきつつ、GCPのサービスとの通信は出来るのでGCEやコンテナに移行するよりずっと簡単にマイグレーションが出来ます。

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GCPにレガシーワークロードを持ってくるだけではなく、あとで書きますがAnthosによってオンプレミスや他社クラウドを運用する方法も中核サービスの一つです。

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こうした「マイグレーション」という分かりやすいエンタープライズを見込んだ機能以外にも「顧客の声を聴き」機能の改善をはかるという事を強調していました。GCPAWSなどと違い「僕(Google)の考えた最強のインフラ」をパブリックに展開しているという側面が強いため、独自の考え方を適用するものが結構多いです。Google Wayに乗れば非常に便利だけど、既存のワークロードを持っていくのは簡単ではないという事ですね。

今回はそう言った部分にも多くの改善が入っています。例えばOSの自動アップデート機能等はコンテナをバリバリに使ってCOSを使うならさほど重要ではありません。元よりWindowsや通常のLinuxディス鳥よりずっと簡単に出来るのです。こうした機能を付けることで既存のワークロードに対して運用コストを下げる事が出来るのでGoogle Wayから普通の道への歩み寄りをしていると言えるでしょう。こういった改修は他にも点在していたと思います。

スケールするインフラを超えてスケールするオペレーションへ

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クラウドといえばインフラのスケールですが、AIをテコにしてオペレーションの自動化を行いスケールする運用というものも今回のテーマにあったかと思います。 これはセキュリティやITオペレーションといったシステムサイドのオペレーションも、カスタマーセンターや経理処理といった業務側のオペレーションのいずれに対しても同様です。

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システムに対してはActiveAssistという形でセキュリティやオペレーションをスケーラブルにするという事を強調していました。個人的なポイントとしては「自動化」ではなく「スケールさせる」と言ってることです。つまり自動化は手段にすぎず、目的は規模が大きくなっても継続可能な運用体制の構築という点を強調していると言えます。

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ビジネス側に対してはコンタクトセンターAIとドキュメントAIが象徴できてした。実はコロナの影響で問い合わせは数倍から十倍という単位で来ている業界はいくつもあります。そのためカスタマーセンターやバックオフィスをスケールさせる事は重要な課題なのです。Googleだけではありませんが、ここに多くのサービスが展開されていると思うのでこれを機にしっかり入れて苦難をチャンスに変えるのが大事だと思います。

Cloud RunによるGCPサーバレスの再構築

BorgベースのGCPテクノロジーをDockerに変更していくのも大きな流れだと感じました。今回は特にCloudRunがGAになり2008年に最初のGCP製品として登場したGAEを12年振りに置き換えるとこが出来ます。また、Event for CloudRunとWorkflowの登場によりFaaSであるCloud FunctionsもCloudRunで置き換えることが出来るようになります。

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これは元々Googleの内部技術であったBorgをより一般的なDocker等に置き換える事でK8s上で実行できるようにするという事です。これはGoogleのマルチクラウド戦略上、非常に重要な要素となります。

Multi Cloud as Google Cloud Platform with Anthos

現状多くのクラウドベンダーはハイブリッドクラウドとしてオンプレミスのデータセンターとの連携を強化しています。これはそもそも現時点で全面的にクラウドにしてない会社は何らかの理由でオンプレミスを直ちに撤去出来ないので、それらを取り込むためにはハイブリッドクラウドを推し進めるしかないからです。

加えてGoogleは6%以下というシェアの低さから多くの利用者が別なクラウドをすでに使っている可能性が非常に高いです。そのため、彼らはマルチクラウド戦略を取らざる得ず、今回のセッションの中でもひたすらそこを繰り返していました。

そしてGoogleのその回答はAnthosです。

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Anthosを使うことで複数クラウドK8sを管理できるのでワークロードを一括して管理できる、と考えていましたがそこはどうも要素の一部にすぎないようです。

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Anthosはワークロードを一括して管理できるというだけではなく、Googleのマネージドサービスの実行基盤でもあります。GKE on PremはもちろんですがCloudRunが動作するのでPaaSとFaaSがカバーされます。他にもAI関連もAnthos上で展開されますし、キーノートにも出たBigQuery Omniは虎の子のBigQueryすらマルチクラウドで動かす技術です。

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このようにAnthosは我々ユーザのワークロードの管理/運用という以上にGoogleのマネージドサービスのデプロイメント先という特性があります。そのため、先ほども書いたようにGoogleはBorgベースの既存テクノロジーをGKEで動作可能なDockerベースの技術に置き換えているのです。

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これが推し進められると、将来てきには「Anthos IS GCP」と言える状況になるんじゃないでしょうか? これはまさにGoogleが「Datacenter as a Computer」としてDCを一つのコンピュータのように扱えるようにしたのと同様に、オンプレミス/他社クラウド/GCPをひっくるめて一つのGCPとして管理しようとしてるのではないかと考えています。

そのような状況下では既存のGCPGCP Optimized Infrastructureという形になり、例えば現在のBigQuery OmniのようにAWSで動かす事は出来るがGCPで動かせばより高速に動作する、という状況になるんでは無かろうかと。ちょっとワクワクする感じですね!

まとめ

配信およびこの解説の後半は完全に私の妄想記事ですが、まああながち外してないのではと思います。Google自身はマルチクラウドを推し進めざる得ない立場なのでその上での戦略となればこれに近しいものになるでしょうし。AzureとかOCIとか他の会社の動きも含めて今後どうなるのか楽しみですね。AWSは王者だからそこまでドラスティックな事は考えないでしょう。たぶん。

いやー、それにしても本当に長かったです。数えてみたら配信数は20個になってましたし。。。 でも、きっとこうして配信というアウトプットの場を作らなければきちんとセッションを聞かなかったと思うので、いい機会にはなりました。今後もこういうイベントがあったときには振り返り配信をしていきたいですね。

それではHappy Hacking!