2019年 IT News & Topics

はじめに

以下の動画で個人的に2019年 IT News & Topicsをまとめましたので、そのフォローアップ記事になります。 自分の好みでまとめてるので今年書いた記事ともいくつか当然被ってるので今年のブログ記事振り返りを兼ねてまとめてみます。

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Top 10

Quarkus、GraalVM 、OpenJDK

50msというあり得ない速度で「起動」するQuarkusです。HelidonやMicronautなど同様のアプローチのものはあったのですがMicroProfile対応 + Native Image対応という点とコミュニティの勢いで一躍躍り出た感じですね。 こちらの記事でも記載の通りServerlessの登場により今までは強く要求されていなかったスピンアップタイムの極小化に焦点をあてたプロダクトになります。 koduki.hatenablog.com

JavaEEは元々k8s的な機能を内包して独自の世界を作っていましたが、今後はk8sなどのエコシステムと統合する事を前提にスリム化することが期待されます。

同じく今年、Oracle Code Oneでも大きく取り上げられていたのがGraalVMです。 koduki.hatenablog.com

GraalVMはJavaの新しい実装ですがRubyPythonなどのスクリプト言語を動かす環境でもあります。速度が注目されがちですが「RubyでJFRなどJavaのエコシステムの機能を使う」みたいな応用方法もあるので今後の運用が気になるところです。

AOTコンパイルによりJavaをNative Imageに変換できるためQuarkusを筆頭にスピンアップタイムの改善やCLIのコマンドをJavaで作成しやすくなります。

OpenJDKに関しては今年で「Java Still Free」はある程度浸透したのかな、と思います。もちろん、誤解が完全に解けたわけではないのですが元々興味がある人たちのところにはいったん届いたのかな、と言う感じ。 Oracle Code Oneで驚きの新発表が無かったのもオープンな開発がきちんとできてる証拠なので良かったと思います。来年は結構大きな仕様変更も入るので楽しみですね!

Serverless on Kubernetes - Cloud Run, EKS Fargateなど

GoogleのCloud Run, AWSのEKS Fargate, AzureのKEDAなどManagedなk8sの上にCaaSやFaaSを置く試みが登場しています。 qiita.com qiita.com

個人的にしばしば繰り返して主張してるのですが、これはやはりみんなk8sを運用したくない、という事に対する回答だと思っています。

そもそもk8sをなぜ使いたいのでしょうか? それはコンテナを適切にリソーススケジュールしたり、無停止リリースしたり、ロギング/モニタリングしたり、サービスメッシュと統合したいからですよね? k8sはそれを実現できますが本質的に基板よりなのでそもそもGAEやHerokuあるいはAWS Lambdaを運用するための技術なのです。なので開発者/サービス運用者の視点で見ると少し複雑です。 かといって好きなバージョンの言語やライブラリは使いたいしベンダーロックインも避けたいので謹製のPaaSやFaaSはなるべく避けたい。だからk8s使ってるって感じですよね。

現状はk8sの基本的な機能が整ってきたのでこのようなもう一段階抽象度を上げたレイヤーを各社がこぞって作成して、ベンダーロックフリーなサーバレスを確立しようとしていると思います。

現時点ではFaaSやCaaSでゼロインスタンスになる事を前提としたアプリケーションは少なく既存のアプリケーションを動かすのは困難ですが、手前味噌ですが「Kuda」や「gsu」みたいにサーバレスにデプロイするアプリも増えてくるはずです。CMSとかBI Toolとかも相性良さそうですし。

Docker Enterprise事業売却

さて、そんなわけで絶好調に儲かってそうなDocker incですが実はそんなことはありません。 そもそも現在流行ってるのはDockerではなくk8sです。実際にk8s上で動いているコンテナもcri-oとかより軽量なものとなっています。

もちろん、開発環境というかデスクトップではDockerを使用している人が多いでしょうが元々商売のタネはManaged/Hostingでした。 そこでDocker-swarmをベースとしたDocker Enterpriseというサービスを展開していたのですが残念ながらk8sに負けたので先細りの状態のようです。

今後はbakeのようなビルドツールやコンテナを利用した開発環境を進めていくようなのでそれはそれで今後が楽しみです。

これはコンテナ界隈においては一つのターニングポイントかなぁ、と。

オープンソースベンダーの反発とその後

MongoDBの言葉に端をはっするAWSOSSベンダーの争いです。ちょうど最近も追加の燃料が投下されました。

そこでうまい事やったのがGoogleです。Cloud NextですかさずOSSコミュニティと仲良くやっていくという宣言をし、実際にGCPにredisやconfluentのマネージドなサービスを置きユーザはGCPにお金を払ってGCPから各ベンダーに費用が回るというスキームを作りました。 これで、お互いの商売がうまく回りますしユーザとしてもGCPにお金の払い先をまとめれるので便利です。

Docker社もそうですがやはりプロダクトの開発元の会社には何らかのベネフィットが回る仕組みも大事だと思います。

不揮発性メモリが商用DBで採用

MRAMなど不揮発メモリはITクルクル詐欺の代表格の一人です。ちなみに他にはIPv6とか光磁気ディスクのローカルディスクとかがノミネートしてあります。 今回、Intelの3D XPoint Optane DC がついに商用DB --- Oracle Exadataに採用されました。

koduki.hatenablog.com

Exadata自体はおいそれと買えるものじゃないとはいえ、不揮発性メモリが研究室から出てきたのは大きな進歩だと思います。 GCPでもまだ申請しないと使えないはいえM2シリーズとして12TBのOptane DCが利用できるので不揮発性メモリを前提にしたアーキテクチャの研究も進むんじゃないかと期待せざる得ません。

また、データベースとしては下記のような現代的なハードウェアを前提としたアーキテクチャも登場しています。 特にTsurugiに関しては国産OSSと言う意味でも、INSERTつよつよのシリアライズトランザクションDBという意味でも頑張って欲しいです。 koduki.hatenablog.com koduki.hatenablog.com

量子コンピュータ

夢の未来技術といえば、VR核融合、そして量子コンピュータです。このうちVRはすでに手のかかるところまでやってきました。核融合に関しては「Amazonのジェフ・ベゾスCEOが110億円を投資した核融合発電所が2025年に始動 - GIGAZINE」という話もあるので爪の先くらいはかかってるのかもしれません。 そして、量子コンピュータに関しては指の先くらいはかかっておりすでに稼働しています。

といっても速度は実は古典的コンピュータつまりふつうのIntel CPUの方が速いのです。今年はGoogle量子コンピュータの方が速い計算を見つけた、というのが大きな話題を呼んでいたと思います。 ここは10年20年先の分野だと思いますがスパコン同様に離されと追いつけない分野なので日本も頑張り続けてほしいなと思います。(小並感)

ARMとRISC-V

Snapdragonの新作がでたり相変わらずモバイルでは好調のARMですが、今年はサーバやHPCの分野でも活用も見えてきました。

ARM64FXを採用したポスト京の富岳がGreen500の一位をとりましたし、去年に引き続きAWSで独自設計の次世代ARMプロセッサ「Graviton 2」ARMチップをリリースしました。

OpteronのAシリーズの時と違って今回は内需というかある程度ユースケースが見えての登場なので継続性が期待でき、ITクルクル詐欺の汚名を返上できそうです。 HPC分野にしてもサーバ分野にしても実際のところ省電力/電力効率が非常に重要なので今後x86の牙城を一定レベルで崩すことが期待されます。

また、RISC-Vも色々ありました。特に、アメリカの経済制裁の影響もあってHuaweiやAlibabaといった中国からのコミットが多かった印象です。 研究および実用でOS対応や2.5GHz/16コアといった高性能チップを開発するなど、政治抜きに考えれば良いことだなと思います。本質的にOSSは自由であるべきですし。

もちろん中国だけで利用されているとこではなく、WDもきっちりチップを約束通り作ってきましたし、GoogleのOpenTitanにもRISC-Vが使われています。 日本の事例としても理研創薬専用スパコンのコントロールチップとして利用しています。Googleなんかは内部的にはもっと使ってる可能性も高いですしRISC-Vも徐々に流れが出来てきた感じです。

MFAとZero Trust Network

MFAに関しては今年は日本では結構騒がれましたね。7-Payの件で。

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Zero Trust NetworkはMFAなども活用して既存のVPNよりもセキュアなアクセスを行う方法の総称です。次世代VPNと呼んでいいでしょう。 これに関しては元々GoogleのByondCorpなど概念はありましたがこの1,2年でセキュリティベンダー含めてワーディングをしてきて徐々に浸透してきたかと思います。

これに関してはまた来年ブログか動画を作りたいと思います。

5Gとクラウド

5Gの目玉は速度以上にレイテンシーです。しかしながらその超低レイテンシーを活かすにはエッジコンピューティングが重要です。 エッジコンピューティングは「どこをエッジと定義するか」というのが揺れているというか定まってないので時にはデバイスだったり時にはCDNだったりするのですが、今回はモバイルネットワークです。 具体的には基地局の中か近距離に小さなDCを置く事になります。ここにサービスをデプロイしてAWSGCPなどのインターネット上のクラウドよりも素早い動作をさせることになります。

この分野、各キャリアがどうやってクラウドベンダーになるか? って部分が個人的にとても気になってなのですがAWSという巨人がKDDIと組む形で日本に乗り込んでくるようです。 こうなると当然他のキャリアやメガベンダーも乗って来るわけでGoogleやAlibabaの動きがきになります。

Oculus Questのリリース

最後にOculus Questのリリースです。 Oculus Questは携帯可能であのスペックという点で既存と一線を画する存在です。

とか言いながら私はVive Cosmosを買ったので全員がOculus Questを買うわけではないだろうと思いますが、普及と言う観点ではどこでもすぐ使えるというのは大きな強みです。 自分自身の使いやすさも当然ありますが、他人と体験を共有しやすくなるので輪が広がるというのもポイントです。

来年はARグラスのn-realが出ますのでここが一つターニングポイントになるかな? と期待しています。

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まとめ

個人的には今年一番の変化は自分がVtuberというかVRやってみたことですね。

特に日本ではアニメ調に極振りされてる事もあって人を選ぶ状態だけど、アバター系はまさに仮想現実って感じをすでに味わえる。 リングメニューが使えるのは本当に衝撃でした。。。 あと本当にアバターが自分の一部のように感じれますしね。

さておき、個人的な興味でクラウドやHPC、あとVRが中心になりましたが如何だったでしょうか? 他の人の書いたTop10もぜひ見てみたいですね。

来年も皆さんおよびコンピュータ様にとって良い年でありますように!

それではHappy Hacking!