コミックVケットに参加してきました
はじめに
夏と言えば夏コミ! と言いたいところですが、残念ながら今年はコロナの影響で中止となってしまいました。しかし、代わりにという分けではないのですが今年はVR上での同人即売会であるコミックVケットがありましたので、そちらに参加してきました!
コミックVケットってなに?
コミックVケットは株式会社HIKKYが運営するVR上での同人即売会です。VRChatのイメージが強いですがClusterやSTYLYでも参加可能でした。
この会社は元々、VKET/バーチャルマーケットというVRで使うアバターなどの即売会をVR上でやるというイベントを運営している会社で、そちらはすでに4回実施されています。ちなみに次の5回目は12月末からです。
こちらはVR上のイベントという事で空間デザインも相当に凝っていて、単純に見に行くだけでも面白いです。コミックVケットはその同人誌即売会版というところですね。おそらく前々から話題としては上がっていて今回のコロナの件で「いっちょやってみるか!」となったんじゃないかなぁ、と。
場所はバーチャル秋葉原。実際の秋葉原をモデリングして歩行者天国でブースを設置してる感じでした。なんだか久しぶりにアキバに来た感があってとても懐かしかったです。
なんだか見おぼえのある感じですよね? とらのあなの元気な世界線は安心します。
ちなみに、コスプレスペースもありました。
私は時間が合わずにイベントとかは見てないのですが、開会式とかトークショー?っぽいのはあったみたいですね。あと、VRChatの高画質版は人が多い時に入ると私のちょいツヨPC程度では重力に逆らえませんでしたw 人が少ない時間帯ならVRChatのQuest版やClusterなどでは普通にみれたので、高画質版どんだけ作り混んでるの!? という感じですね。
どういう本が買えたの?
即売会なのでどんな本が買えたの? というのは気になりますよね。以下が参加サークルの一覧です。
ブースもこんな感じでずらーっと並んだものが複数区画ありました。
一通り見た感じでは1次創作がメインだけど2次創作も少なからずありました。あと、VRやVtuberネタが何となく多かった気がしますね。これはプラットフォームの特性が大きいと思いますが、もしかしたら単に最近のイベントの傾向なのかも。ちょっとここ何年か行けてないのでわからず。。。
萌えな感じの作品も燃えな感じの作品も当然たくさんあったのですが、こういうカオスなラインナップもちゃんとあるのが夏の即売会という感じがしてとても好きですw
というかトイレ研究会って阪大何やってんだ。。。 思わず買っちゃったじゃないかw
どういう感じで買えたの?
さて、気になる購入は? という事ですが基本は売り子さんの手渡しでは無く自動販売機方式です。
コミケなどの即売会と言えば売り子さんと話すのが楽しみという人も居ると思いますが、コミケなどと違って朝開いて夜に閉まるという分けでもないので24時間人間は活動出来ない以上仕方ないですね。私はタイミングが悪くて出会えてなかったですが、日中等なら作者さんなどがブースにいらっしゃった事もあるようなので、そのタイミングでなら会話できたと思えます。VRは空間を超越しますが、時間は越えられないので仕方ないですね。
ちなみに実際の作業としてはVR上で立ち読みして気に入ったらPCで買うという感じですね。 立読みは以下のようにVR上で行う事ができ、気に入ったら横のブラウザボタンを押します。
ブラウザボタンを押すと「PC側の」ブラウザが立ち上がるのでそちらで購入をします。 購入はVケットのWebページ、Booth、とらのあなで実際の通販とサークルによって違います。この辺は急きょ開催という事もあってサークルが参加しやすい形にしたんでしょうね。
できれば将来的にはVR上でせめて購入まで完結してくれるとUX的に良いですねー。個人や有志では前払い型のポイントサービスを作るのは面倒ですがクレカならAPI叩くだけで良いものも多いですし、運営会社の
まとめ
正直、まだ粗削りなところはあると思います。特に購入体験の部分はVirtualCastと同じようにVRで完結してくれると非常に良いですね! 他にも権利周りの所とかも色々言われてるけど、この辺はおいおい整備何だろうな。
と、先に課題っぽいことを言っちゃいましたがこれは大きな第一歩だと思います! ミクランドとはまた別な方向性で面白かったですしね。
これから回を重ねるごとにレベルアップして参加者も増えてくるとVRで行われる定例イベントというよりもう一つの夏(あるいは冬)の定例イベントとして認知されるくらい育つと良いですね。
日本の深夜帯とかにアクセスすると外国人勢も結構居て、同人誌見ながら「oh, so cute...」とか言ってましたねw こういうボーダレスな参加が可能になるのはVRの魅力ですよね。あと、プラットフォームがVRChat以外もサポートしているのは良いですよね。ワールドのデザインとか複数対応はとても大変だと思いますが、この辺はUnityがある程度楽をさせてくれるのだろうか?
おもしろそうなので、今度は自分も出す側として参加してみたいなー。
それではHappy Hacking!
関連リンク
VRの未来を感じさせてくれたMIKU LAND GATE βに参加してきました
はじめに
2020.8.8(Sat)〜10(Mon)の三日間、VirtualCast上で開催されていたVRイベント MIKU LAND GATE βに参加してきました。 これはニコニコ超会議の一部として開催されたVRイベントでVirtualCastを使って広大な空間を作成しその中でイベントを開催するという近未来的なイベントです。
同じようなVRイベントとしてはVRChat内で行われるV-KETがありますね。ただ、今回のミクランドでは(後述する買い物機能はありますが)即売会では無くテーマパークなのでそこが最大の違いでしょう。 www.v-market.work
VirtualCastの今出来ることの限界---あるいは限界以上に使ったのが今回のイベントだと思います。VirtualCastそしてVRの可能性を感じられる非常に良いイベントでした。
当日の様子は以下の「#ミクランド」のハッシュタグや公式放送から確認出来ます。
【初音ミク公式VRワールド】MIKU LAND GATE β @ニコニコネット超会議2020夏 live2.nicovideo.jp live2.nicovideo.jp live2.nicovideo.jp
何がすごかったのか?
凄い凄いと言うだけではあれなので、何が凄かったかを書いていきたいと思います。
フラグシップとなるVCIや空間デザイン
今回のミクランドのワールドは「重力を感じる」をテーマに、住宅やビルなどの実際の建築物の設計を手掛ける「東海林健建築設計事務所/Takeru Shoji Architects」の一級建築士によりデザインされたそうです。
そのためか、VR的な非日常はありつつも実際にそこに居て違和感のない普通の空間でした。その実在感が「実際にイベント会場に来ている」というのをより強く感じさせてくれたと思います。 各モデルも非常に精巧でした。
クオリティが凄かったのは何もワールドのデザインだけではありません。今回登場したVCIも非常にギミックに富んだものでした。
たとえば、ボタンを押すと絵が出現するホロポスター。
買ってその場ですぐ使えるバーチャルコンタクトや着るのが少し難しいけど着せ替えコスプレセットなどもありました。パーツを買ってMayaモデル編集ソフト等でアタッチするのではなく、アクセサリの類をその場で付けれるのは良いですよね。
時計やコメントビューアも付いているちびボカロエモートパネル。動画だと少し分かりづらいですがボタンを押すとエフェクトが出ます。
他にもバーチャルドラムやバーチャルギター、バーチャルシンセサイザー等の実際に音が鳴る楽器など、VCIでここまでできるのか! という事を示してくれるまさにフラグシップとなるコンテンツが投入されていたと思います。
今後はユーザで作るVCIも公式VCIにインスパイアされた形のものがいくつか出るんじゃないかと。実際、私も作ってみたくなりましたし。まずはUnityの勉強からだけど。。。
VR上で買ってその場ですぐに使える
今回のミクランドでは実際にVirtualCast上で購入してその場ですぐに利用することが出来ました!
この購入体験は中々素晴らしくてVirtualCast上で取り扱えるものならその場でかって、すぐにカスタムアイテムとして利用できるのでVRとそれ以外を行ったり来たりする必要はありません。現状はVR上で買い物をする場合はQRコードを使って別で決済などが一般的だと思いますが、その場合は決済はさておきデジタルのものであっても実際に手に入れるまでに別の作業が入ります。VR上で買ってそのまま使えるというのは特に今回の公式VCIで出ていたカラーコンタクトやキューティリズムエフェクトだと大きなアドバンテージですね。UXが全然違うかと。
VRM/VCIそしてThe Seed Onlineの思想がまさに体現されてる部分だと思うので、この点はVirtualCast以外のVRにも広がって欲しいです。
ちなみに購入はその場でクレカ決済などではなく事前にVCCというポイントを購入してそちらでやる方式です。
他のVRやオフラインとの連動
VirtualCastのものがVirtualCast内で買えるだけではありません。今回VirtucalCast上で買ったミクさんや東雲めぐさんのポージングフィギュアはバーチャルキャストだけでは無くデジタルフィギュアアプリのHoloModelやMakeAvatarの方でも利用できるようになります。
これはどのプロダクトVRMを採用しているから出来るのかなぁ、と思ったりもしますが特典シリアルコードで買うのでシステム的な連携はそこまでしてないのかもです。
あと、こちらは従来的なQRコードシステムではあるものの、実際の物理的なマグカップが買えます。ゲーム内で購入して実際のものが届くのはセカンドライフでピザ頼めた感じでとても好きです。
このあたりがさらに発展して、APIなどで自動連係できるようになるともっと面白いですね! VR上でのお買い物体験はAmazon的な便利な自動販売機としては向いてないと思いますが、買い物自体は単純にエンターテインメントの側面もあるのでその方向性にはかなりマッチしていると思いますし。
色んな人と出会える。ミクさんとも会える
自分の使い方的にVirtualCastはほぼ配信のために使ってたので、あまり人と会える事を意識してなかったのですが、今回は公式のオープンワールドという事もあって色んな人に出会えました。 パレード待ちとかで割と広場の公式配信前にみんな集まってわいわい話せたので初対面でも話す機会がある状況は良かったなー、と。VR上で人と話すのは本当に人と会って話してる感覚になるので、これはぜひ体験して欲しいですね。VRChatとかのがその辺は向いてそうですけど。
東雲めぐちゃんとやレン君と記念撮影もできました!(公式の) ミクさんとのは残念ながら出会えませんでしたが楽しかったです!
ちなみに記念撮影の一番面白い所は実際にカメラを警備員(社長)に渡して撮影してもらう所です。カメラを渡せるというのが凄いという点もあるのですが、撮影会ではみんな順番待ちで並んだりとVRはデジタルな世界なのにアナログな体験ができるなぁ、とあらためて思いましたw
これは別に悪い事では無くて、実際を体験するという意味では非常に正しい状況だと思います。逆に効率的に行くならVRではなくよりデジタルに寄せた通常のWebとかの方が良いですからね。
画面の向こうとのコミュニケーション。みんなで作るイベント
MIKU LAND GATEはVR機器を持ってる人が直接入って楽しむ以外にも生放送配信としてニコニコ動画と繋がっていました。そのためVRの中だけではなくVRの外側ともコミュニケーションが取れるのですね。生放送配信とかに慣れているとそうでもないのですが、良く考えたら文字通りテレビの中の人と話してるのはすごい不思議な感じですよね。
あと、ニコニコ動画的だなと思ったのが今回は公式の生放送と繋がっているカメラはVR内の参加者ならだれでも自由に操作できました。なにされるか分からない懐が深い。。。 一応認識してる限りだとVR内の案内を買って出る人や色んなアピールをする人など色々いて、結果として非常に盛り上がったんじゃないかと思います。こういう草の根感はニコニコ動画的だよなー、とやはり思いますね。単純に潤沢に撮影係を用意するのは大変という事情もあるでしょうけどw
まとめ
βという事で安定度はまだまだという点はもちろんありましたが、それでもこのタイミングで出して頂いて良かったと思います。
今回はVirtucalCastで何が出来るのか? という技術的展示会の側面もありつつ、同時に単純に楽しいイベントとしてメチャクチャ面白かったので来年以降もぜひ開催して欲しいです。今回はβなので次が正式版と期待したいところですが、あえて永遠のβとしてギリギリを攻め続けてもらうイベントでも良いかもですね。(安定動作な正式版も見たいけどw)
もう一つ、今回は「その場で買ってすぐ使える」という点も含めてVCIの色んな側面を知る事が出来ました。色んなギミックも楽しかったですが特に購入体験が自分は一番印象的でしたね。 この部分をもっと作り混めばアクセサリ的なものをVCIで即購入できるだけではなく、動画やイラストをホロポスター的な感じで販売したり、マンガなんかもVirtualCast内で売買できそうですね。VRで買ってVRで漫画が読めて、同じデータが電子書籍としてPCやiPadでも読めるという世界は魅力的です。なんかちょっと作ってみたいな。。
という分けで、MIKU LAND GATE βの感想でした。改めてになりますが、VirtualCastそしてVRの可能性を感じられる非常に良いイベントでした!
今週は他にもComicVketにやポケモンバーチャルフェストなどVRイベントが目白押しなので本当に楽しみです。
それではHappy Hacking!
テックポエマーのWeekly News! - 2020/08/02 - 10分問タイトル詐欺を反省
今週から「10 min」から「Weekly」に変えて自分に正直になりました。今週はProxyless Service Meshがちょっと面白かったですね。Apache Arrow も1.0になったという事で共通データフォーマットとしてのポジションがますます固まるんじゃないかと思います。
今週のサマリ
動画中の引用記事
テックポエマーの10min IT News! - 2020/07/26 - 車田理論をNVIDIAが実現!?
今週はベンツがついにアニメやSFのようなフロントガラスに映像を映せるようになったのが感慨深かったです。あと、「Universal Print」は地味だけどコーポレートITにはすごいインパクトがあるので早く一般化して欲しいですね。
最後に、Ampereはハードウェア性能で20倍、プルーニング対応で20倍の合計400倍だぁぁ! という車田理論を実現している可能性が出てきました。
今週のサマリ
動画中の引用記事
速報: Google Cloud Next '20 振り返り!【ついに完了】
- Weekly 9: Business Application Platform
- Weekly 8: Cloud AI
- Weekly 7: Application Modernization
- Weekly 6: Data Management & Database
- Weekly 5: Data Analytics
- Weekly 4: Security
- Weekly 3: Infrastructure
- Weekly 2: Productivity & Collaboration
- Weekly 1: Industry Insights
Googleのクラウドに関するカンファレンスであるCloud Nextが絶賛オンラインで開催中です。 cloud.withgoogle.com
Googleのカンファレンスと言えばGoogle I/Oをイメージする方が多いと思いますが、GCP関連に関しては毎年Cloud Nextとして別途開催されていました。
ただ、今年はコロナの影響で他のイベント同様にオンライン開催となっています。その特徴は何と言っても「9週間連続の怒涛の開催!」です。
毎週、「Industry Insights」「Productivity & Collaboration」「Infrastructure」「Security」「Data Analytics」「Data Management & Databases」「Application Modernization」「Cloud AI」「Business Application Platform」の九つのテーマが一つずつ解放されていきます。
それぞれに関して振り返りの動画を作っていこうと思うので良ければ見てみてください。
Weekly 9: Business Application Platform
今週はBusiness Application Platformです。ついに最終週です! Business Application PlatformはAPI + No Codingを表すGoogleの用語のようです。いわゆるEUC (End User Computing)ですね。 とはいえセッションはほぼほぼAPIに関してです。新サービスAPI Gatewayも出ましたし、今まで通りApigeeも大きな位置を占めます。
基本的にはAPI GatewayはシンプルでよりGCP NativeでApigeeは単独で完結した主にAPI販売やサードパーティに提供する時に有用な機能を含んでいるというのが差分になります。
これでGoogleはAPI管理(Apiee)、API Gateway(API Gateway)、サービスメッシュ(Cloud Endpoint)とポートフォリオがそろってきました。
1回目
2回目
Weekly 8: Cloud AI
今週はCloud AIとなります。Googleの提供するAPI Platform, Document AI, Customer Center AIに関する話でした。GoogleはもちろんAIに関しては元々かなり力を入れていましたが、今年は製品が成熟してきたのか新技術を使った目玉機能の紹介というよりトータルソリューションとしての提案がメインになっていたと思います。
特に、コロナの影響でカスタマーセンターは架電数が増える上にオペレータの数も削減せざる得ないので、CC AIのようなスケールするカスタマーセンターの仕組みが大きな鍵になりそうです。
なお、ちょっとボイスチェンジャーの調子が悪い句て非常にノイジーな状態での配信となってしまいました。
Weekly 7: Application Modernization
今回はApplication Modernization という事で、開発や実行環境に運用そしてAnthosによるマルチクラウドと非常に盛沢山な内容となっていました。 まとめ?スライドも今回は最多の120枚です。キーノートも3つありましたしね。
Googleのマルチクラウド戦略、そしてそれを下支えするDockerによるサーバレスのCloud Runの進化が個人的には印象的でした。
発表に使った資料はこちらです。
1回目
キーノートをはじめ全体的なApplication Modernizationのサマリや、Cloud Run, Event for Cloud Run/cloudevent, Cloud Workflowに関して話しました。Cloud Workflowは特に登場を心待ちにしてたものなのでオープンβになる日が楽しみです。
2回目
Stackdriver改めCloudOpsやbuildpack、そしてなんといってもAnthos/GKEの話になりました。また最後にメインフレームマイグレーションの話もあります。
Weekly 6: Data Management & Database
先週までに比べるとずっと数が少なかったですね。それでもSLAを代表にどんどん機能は強化されているので成熟期なのかな、という印象です。
特にCloudSQLはここ数年でかなり良くなっており、SQLServerのサポートももちろんですが以前はOracleの専売特許であって透過暗号やDR構成も難なくこなすようになりMySQLやPostgreSQLでも機能面では十分というのを改めて感じました。
まあ、Googleのポートフォリオ的にはCloudSQLはあくまでレガシー互換で、RDBとしての本命はSpannerのようですがw
発表に使った資料はこちらです。
1回目
Spanner/Firesotreの機能および新機能。また、オンプレミスなどから移行する時にシフト&リフトでどのようなDBを選んでいけばいいかのガイドがメインとなります。
2回目
SQLServer, PITR, DR機能などCloudSQLに関しての話となります。商用DBというかOracleみたいな事が出来るようになったのは本当に感慨深い。てか、HA構成ってただのPDなのは初めて知りました。
Weekly 5: Data Analytics
GCPの本業と言っても過言ではないData Analyticsです。何しろBigQueryの登場はGCEより早いですからね! 感想のサマリとしてはこんな感じ
- Smart Analytics
- Break down data silos!
- BigQuery, BigQuery, BigQuery!
- BI Engine and Omni
- Pricing Control
- 20-30% 性能改善 & 99.99% SLA
配信に使った資料はこちらです。
1回目
今回のキーワードである「Break down data silos!」とBigQuery自体の基本的な動きを軽く解説。そのあと、性能改善や今回の真の目玉であるBI Engineの話をしました。
2回目
3回目
Weekly 4: Security
インフラほどではありませんが、セキュリティにも多くのアップデートがありました。感想のサマリとしては以下の感じ。
- A Safer normal
- Security OF the cloudはもちろん、Security IN the cloudのサポートも強化されている
- Active Assistによるスケールするセキュリティ
- SCCの強化やChronicleの新規登場でセキュリティは益々強化
- Confidential Computingは次のHTTPSになるかもしれないが成熟するのはもう少し先
内容が多いので以下のカテゴリで話していこうと思います。
- Compliance & Standard
- Secure Infrastructure
- Security Scan & Monitoring
- Support of Application Security
- Identity & Access Management
資料はこちらとなります。
1回目
Compliance & Standardから Secure Infrastructureまで。Assured Workloads for Governmentはまだベータですが、政府系だけではなく金融や医療にも広がるとグッと使いやすくなりますね。 www.youtube.com
2回目
Security Scan & MonitoringとDLP API。DLP APIはマスキングに有効なので積極的に活用出来たらと思ってるし、セキュリティスキャン系はGCP単独で運用するならサードパーティのセキュリティ製品無くてももはや良いのではと思ってる。やっぱり利用者のミスで情報流出するという事実にクラウドベンダーも座して見守るだけとはいかんのだろうなぁ。
3回目
アプリケーション開発支援とかIAMの話。セキュリティ回はこれで終わりになります。reCAPTCHA Enterpriseは良さそうですよね。あと、IAM周りも最小権限原則をいかに「スケールさせるか」という点に注力したアップデートが多かった印象です。Ownerでの運用、ダメ、ゼッタイ。 www.youtube.com
Weekly 3: Infrastructure
さて、ここからが本番です! インフラの発表です。こちらはかなりいろんな発表がありました。新しいインスタンスやストレージが出来たりVMWare Engineなど50個以上の発表があって話してると長くなり過ぎたので分割しての配信にしました。
全体的な感想としては各種性能やセキュリティが順当に強化されるだけではなく、GCPが「僕の考えた最強のインフラ」から「顧客の声を聴いたいつも通りの事が出来るインフラ」へ変化しようとしているメッセージを強く感じました。あとTrafficDirectorのProxyless gRPCはサイドカーを使わずgRPCの1.3から取り込まれたxDS APIを使って直接サービスメッシュを作るという事で今後の類似のプロダクトにも影響を与えるリリースだと思います。
配信に使ったスライドはこちら。Google Cloud Next '20 Weekly 3の振り返り - Speaker Deck
1回目
Computeからストレージまでの発表に関しての振り返り。順当にスペックやセキュリティがあがりファミリも増えました。VMWare Engineはマイグレーションとしてリフトアプローチを採るためにはかなり良いソリューションだと思います。
2回目
ネットワーク周りの発表に関しての振り返り。Googleが閉域IP網GCPを活用してる感。途中凸って頂いたので脱線しながら話しています。ありがとうございました。まあ、脱線はいつもか。
3回目
Active Assistなどの運用の話と5Gに関するセッションの振り返り。Active Assistは運用や設計の手間を大分減らしてくれそうなのでこのキーワードで今後も頑張って欲しいです。
Weekly 2: Productivity & Collaboration
コラボレーションツールであるG Suiteに関する発表です。技術的な話はあまりありませんが、コロナで始まったリモートワークに適したツールとしてG Suiteの改めての紹介やビデオチャットであるMeetの新機能の話がありました。個人的にはChrome EnterpriseやAndroid EnterpriseといったIT管理者向けの機能がとても気になりました。
配信中に使ったスライドはこちら。 Google Cloud Next '20 Weekly 2の振り返り - Speaker Deck
Weekly 1: Industry Insights
キーノートを含めた業界動向に関しての発表でした。詳しくは動画の中で話していますが、AWSやAzureの資産をBigQueryで検索できるBigQuery Omniが特に気になる内容でした。
配信中に使ったスライドはこちら。 Google Cloud Next '20 Weekly 1の振り返り - Speaker Deck
テックポエマーの10min IT News! - 2020/07/11 - 「悪の帝国の今とOSS」 を公開しました
今回はせっかくなので新しく作った新アバターを配信で使って見ました。
今週はMSにしろOracleにしろOSSと絡めた話が多かったですね。どちらもOSSのイメージなんて10年前は無かったので感慨深いです。かつては悪の帝国とか言われたりOSSは敵だと言ってた会社なんですよねぇ。
あと、なんといっても個人的な驚きと期待のニュースはGoogleによるNorthの買収ですね。
今週のサマリ
動画中の引用記事
Product Update
- Announcing Perl 7
- Spark Release 3.0.0 | Apache Spark
- WildFly 20 is released! · WildFly
- Webアプリケーションフレームワーク「Angular 10」リリース | OSDN Magazine
- 「PuTTY 0.74」が公開 | OSDN Magazine
Helidon 2.0 Release
Coherence Community Edition Release
理化学研究所、Oracle Cloudで「富岳」の高度な計算資源の有効活用と研究成果創出を促進
Announcing Azure Functions extension for Dapr
LINE上で自社サービス展開可能な「LINEミニアプリ」、法人向けにエントリー受付を開始
MRデバイス「HoloLens 2」、マイクロソフトストアで販売開始
Google acquires smart glasses company North
世界1位の謎の半導体 アーム (ARM)とは?
TL;DR
- ARMはx86と同じISA。ライセンス方式なので実装は色々ある
- 省電力特化というポジションからHPCやサーバにも手を伸ばし始めている
- A64FX由来のCPUとかが流行ると良いなー
はじめに
先週はARMに関してビックなニュースが立て続けに起こりました。そう、MacのAppleシリコン採用のアナウンスとスーパーコンピュータの富岳がTop500で4冠を達成したことです!
www.apple.com pc.watch.impress.co.jp
この2つはどちらもARMというCPUアーキテクチャをベースにしています。
そしてARMはiPhoneをはじめとするほぼ全てのスマホで採用されているため、世界最速のスパコンで使われているCPUであると同時に数百億台以上のデバイスで動作するまさに最強のCPUなのです! MacがIntelのCPUから乗り換えても安泰ですね!
と、言う気持ちにもなるかもしれませんが本当にそうでしょうか? 今回はその辺も含めて少しARMに関して語ってみたいと思います。
ARMはCPUそのものでは無く命令セット(ISA)
CPUというとIntelのCore i7/XeonやAMDのRyzen/EPCYが有名ですがARMはそれらとは少し違います。ARM自体はARM社が設計しライセンスしている命令セット・アーキテクチャ (ISA)です。Core i7やRyzenは具体的なCPU製品です。
ISAとはマシン語で利用するCPUのAPIです。つまりISAが同一であればOSやその他のソフトウェアからは同じCPUとして見えます。逆に実際のCPUの実装はマイクロアーキテクチャと呼びます。そのため一口に「ARM CPU」といっても様々な実装があります。これは同じx86命令セットを採用する初代Pentiumと現在のCore i7が全く違う実装なのと同じです。
これが何を意味しているかというと、スマホに使われているA12やSnapdragonと富岳に使われているA64FXは異なるマイクロアーキテクチャを採用しており全然違うCPUだということです。富岳はスマホに使われているチップを大量に乗せてスパコン1位になったわけではないですし、Macに今後採用されるCPU(A12カスタム?)がスパコンに使われているのと同等なものでもないのです。
富岳はSPARCアーキテクチャはすでに廃れていてソフトウェアスタックが貧弱なこと、Macは色々あるでしょうが少なくとも一つの理由としてiPadやiPhoneと開発リソースを共有したいということからARMをそれぞれ採用したと思います。
ちなみにARM以外で有名なISAだとx86, RISC-V, Power, MIPSがあります。
ARMとライセンス
ARMの特徴的な点として積極的にライセンス販売をしていることです。通常CPUメーカーは独自のマイクロアーキテクチャとISAをセットで開発して自社か限られた企業のみで展開します。圧倒的シェアのため互換CPUが乱立したx86でさえ現在は本家IntelとAMDくらいです。Power系CPUもIBMで開発されます。
一方で、ARMのビジネスモデルは大きく異なりCPUライセンスをCPUを作りたい会社に売ることで利益を得ています。カスタムのSoCを作りたいとか極端な低消費電力や性能が必要で独自のチップを必要とするケースは多くあります。ただ、ここで独自のISAを作ってしまうとコンパイラを始めとしたソフトウェアスタックをすべて独自に開発する必要があり非常に困難になります。そこで既存のISAを使い独自のマイクロアーキテクチャを使う事ができればこの問題が解決できます。ARMはまさにそこに注目してISAをライセンスするビジネスを行っています。
ARMのライセンス方式は大きく分けて以下の2つがあります。
- Architecture License
- Cortex License
アーキテクチャライセンスはISAのみを提供して自由にARM互換チップを作れるライセンスです。マイクロアーキテクチャをすべて自前で用意するため難易度は高いですが、自由度も高く技術力による差別化もしやすいので専用チップを作りたい場合に選びます。富士通のA64FXやMacのAシリーズ、QualcommのSnapdragon はアーキテクチャライセンスです。
Cortex ライセンスはARM社が作るリファレンス実装であるCortexをベースにカスタマイズをするライセンスです。手早くSoCを作りたい場合に有効な方式です。多くの企業はこちらを使っていると思います。
この辺りの説明はこちらの図が分かり易かったです。
ちなみにIntelもかつてはXScaleというARMチップを開発していましたし、AMDもサーバCPUブランドのOpteronの名を冠した「Opteron-Aシリース」を持っています。
ARMアーキテクチャの特徴
ARMは低消費電力向けのCPUというイメージが強いですが、それはむしろマイクロアーキテクチャに依存する部分が大きいはずです。
ISAとしては命令セットが少なくシンプルなRISCでありつつ条件実行など頻繁に使われる最低限の高度なCISC風の命令セットを採用したことが、初期段階での低消費電力かつ高性能なという特徴につながってはいたと思います。しかし、それ以上にターゲットが低消費電力だったのでマイクロコードを省いたりキャッシュを小さくしたりアウトオブオーダーやスーパースカラーといった高速化処理を省くといった実装のシンプルさがそのあたりを支えていたと思われます。
現在は様々なマイクロアーキテクチャのARMがあり高性能向けの実装のCPUも多くあります。それらのCPUも現代的なニーズとして高性能と低消費電力を両立したものが多いですが、必ずしもISAがARMだから低消費電力というわけではないと思われます。どちらかというと現在のニーズに最新の技術で1から設計した結果ではないかと。ただ、CISCであり過去のしがらみも多そうなx86よりは...ってのはあるのかもしれないです。IntelやAMDが複数の向けの全く異なるマイクロアーキテクチャを同時に運用するのもしんどいので共通的な部分を増やしたいでしょうし。x86にもCrusoe/Efficeonのような例もありますしね。
現在利用されているARMは主にAArch32と呼ばれる32bitのARMv7, AArch64と呼ばれる64bitのARMv8、次世代規格のARMv9です。スマホなどではARMv8が主流だと思います。また、ARMはそれぞれのユースケースマイにプロファイルを用意しており以下のようになります。
AArch32
基本的にはRISCのため以下の特徴を持ちます。
これに加えてCISC風の豊富なアドレッシングモードを持ちます。またThumb/Thumb-2と呼ばれるよりコード効率の良い命令セットやx86のSSEのようなSIMD拡張命令であるNEONを持ちます。
AArch64
AArch32から命令セットを大きく刷新しています。基本的には汎用レジスタが64bitになったことが最も大きいと思います。ただし、命令長は32bitです。また、歴史の積み重ねで不要になった条件付き実行などの命令セットも多くが削除されており効率かつスッキリとした実装に変わったようです。SIMD命令もNEON改ASIMDとして強化されています。
ARMv8は従来の32ビット命令を全てサポートしているので、x86-64と同様に32bit OSや32bit アプリケーションを動作させることができます。また、サーバ用途を見据えているためVT-xのような仮想化支援機能もついています。最近はAI支援()、セキュリティ機能も強化されているようです。
そして、HPC向け限定ですが富士通と共同開発したScalable Vector Extension (SVE)もSIMD命令として追加されました。用途が違うので当面の間ASIMDとは共存していく関係のようです。
ARMv9ではセキュリティの強化、マトリックス演算/ベクタ演算の強化、メニーコアを見えたトランザクショナルメモリ対応、カスタム命令セットなどが予定に上がってるようです。
AArch64の特にAプロファイルはIntel/AMDにも負けないかなり高機能な命令セットであることがわかります。
代表的なARM CPU
代表的というか個人的に気になってるCPUを書いていきます。趣味の問題でサーバ用とが多めです。
Cortex-X1
CortexはArm社のリファレンス実装です。Cortexシリーズは汎用用途とされていますが、実際問題ARMの利用は基本的にスマホなのでサーバ向けというよりはスマホ向けのCPUになります。X1はその中でも最新のCPUとなります。
まず5nmという驚異的なプロセスが目を引きますね。CPUはプロセスを微細化することで小さくできますし結果として同一面積での処理能力を向上させることができます。
マルチコアはヘテロジニア戦略で異なる世代のCortexや性能の違うコアを複数配置することで全体的な性能と消費電力のバランスをとるBigコアとLITTLEコアを採用しています。
また、X1に限らず最近のCortexは分岐予測機構やスーパースカラはもちろん複数の命令を融合させて実行効率をあげるフューズドMicro-OPsもサポートします。この辺はIntelやAMDが使ってる高速化技術と同様のものですね。
ref: 5nmプロセス向け。性能が2割向上したArm「Cortex-A78」 ~新フラグシップGPU「Mali-G78」なども - PC Watch
Snapdragon XR2
QualcommのSnapdragon XR2はVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのXRプラットフォームをターゲットにしたSoCです。
XR2はSnapdragon 865をベースにしています。865は7nmのプロセスルールで製造されていて、CPUがKryo 585、GPUがAdreno 650となります。Kryo 585はCortex-A77/Cortex-A55をベースにしていて、big.LITTLEを採用した8コアのCPUです。クロックは2.84GHz、L3キャッシュが4MBとなかなかのスペックです。
Geekbench 5の結果は以下となります。
CPU | マルチコア | シングルコア |
---|---|---|
Snapdragon 865 | 3450 | 900 |
Intel Core i5-8250U | 3200 | 750 |
ref: 【6/14最新】Geekbenchスコア、スマホSoC別総まとめ | telektlist
モバイル向けとはいえCore i5はTDP 15W、Snapdragon 865はおそらく7WなのでそれでPC向けのCPUよりスペック高いとは恐るべし。
DSPのHexagonはディープラーニングの推論向けの機能も強化していて、さすがにPC向けのRTX 2050には敵わないけど15 TOPSと結構な性能が出るみたいです。
チップ | INT8(8ビット整数演算) |
---|---|
Hexagon | 15 TOPS |
GeForce RTX 2050 | 48 TOPS |
Apple A13
Apple A13 Bionicは所謂Appleシリコンですね。天才プロセッサデザイナーのジム・ケラーがA4,A5をデザインした事でも有名ですね。
ARMv8.3-AベースですがマイクロアーキテクチャはCortexとは完全に別物と思われます。CPUは2.65 GHzで、big.LITTLEを採用し2つの高性能コア(Lightning)と4つの高効率コア(Thunder)の合計6コアのCPUとなります。
Geekbench 5の結果は以下となります。シングルコア性能はSnapdragon 865を超えていますね。Macに搭載された場合はTDPの制約も減るでしょうからどこまで性能が伸びるかも気になります。
CPU | マルチコア | シングルコア |
---|---|---|
Apple A13 | 3400 | 1330 |
Intel Core i5-8250U | 3200 | 750 |
ref: 【6/14最新】Geekbenchスコア、スマホSoC別総まとめ | telektlist
また、DSPとは別にNPUと呼ばれるDP推論用のチップも積んでいます。でもその割には1 TOPSしか性能がなくてだいぶしょぼく感じるのだけど、整数演算とは別の部分を強化してるかもしれない
チップ | INT8(8ビット整数演算) |
---|---|
Apple A13 | 1 TOPS |
GeForce RTX 2050 | 48 TOPS |
A64FX
富岳に乗ってる富士通製のSoCです。CPUは1.8GHz の48コアです。一気にコア数が増えましたね。
スパコン向けだけあってモバイル向けのCortex等とは根本的にマイクロアーキテクチャが違います。というか、ほぼほぼ京でも使われているSPARC64と同様のようです。
というのも富士通ではメインフレーム、UNIX サーバ、スーパーコンピュータでマイクロアーキテクチャを共通化させています。UNIX サーバ及び京などのスパコンはSPAC、メインフレームは独自のISAです。別のISAやチップ自体のカスタムはしつつもベースのマイクロアーキテクチャは共通化することで品質の安定とコストダウンをはかっているようです。今回もその戦略にのっとり富岳はARMのISAを使いつつも既存のSPARC64やGS21と同様のマイクロアーキテクチャを採用していることになります。x86系CPUがすでにCISCでも何でもないように現代ではISAは飾りという印象が強いとはいえ、単一のマイクロアーキテクチャで複数のISAをサポートするのはなかなかユニークな戦略だと思います。今後、RISC-Vとかが仮に普及してもそのまま対応できますしね。
ref: 富士通ではメインフレーム、UNIX サーバ、スーパーコンピュータでマイクロアーキテクチャを共通化
なので、A64FXは完全に富士通設計なので他のスパコンでIntelやAMDのCPUを使ってるのとはわけが違います。賛否はあるにしてもそこは大事です。
続いて性能をみていきましょう。
このサイトを見る限りだと富岳の2.7 TFlopsはEPYC 7451が0.9 TFlopsなのでCPUとしては桁違いに速いけど、V100の7.8TFlopsよりは遅いからGPU程ではないって感じです。ただし、A64FXというか富岳の真骨頂は15万8976個のCPU、コア数にして730万コアという意味のわからない数を使った超並列処理です。これは2位のSumitが240万コアのPower 9を使ってるのと比較しても極端に多い数字に見えます。そして他のスパコンと違ってGPUなどのアクセレラレータを使ってないのが最大の特徴になります。そのため、OpenMPなどで普通に並列化できます。SIMDへの最適化はもちろん必要でしょうけど、CUDAなどの特殊なプログラミングはいらないのです。
これが「プログラミングが簡単」と散々言われてる理由ですね。単純にそれなりに速いCPUがものすごくたくさんあるだけという構成なんです。そしてこの構成を支えるためにTofu-Dという超低遅延のインターコネクトと1TB/sというメモリバンドを実装しています。
また、ベクトル演算のために512bitのSIMDであるScalable Vector Extension (SVE)も実装しています。SVEはArm社と共同開発した標準仕様なのでJEP 338: Vector API (Incubator)とかGCCにも取り込まれているのがポイントです。仮に富士通の独自仕様としていたらこの辺のアップストリームへの取り込みは難しかったかもしれません。
A64FXや富岳についてはいろんなところで情報が出ているので見てるとなかなか楽しいです!
- Hot Chips 30 - 富士通が発表したPost-Kスパコンのプロセサ(1) 富士通が明かした日本の次期フラッグシップスパコンの心臓部 | マイナビニュース
- 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】1位にこだわらないスパコンとして生まれて1位を獲った「富岳」。日本の技術者たちが開発で目指したものとは - PC Watch
- ポスト「京」のCPUの仕様を公表 : 富士通
ちなみにA64FXを搭載したマシンですが、実は1ノード400万円くらいから買えるようですw www.hpc.co.jp
スペックシートを見ると空冷で2Uの普通のラックのようなので、メニーコアでメモリ帯域が極太なArmサーバとしても買えるお値段な気はします。Dellですら48コアとか160万円くらいはするわけで。最低4ノードでログインノードも追加でいるみたいなので2000万円くらいは実際かかるにしても考えれるお値段。Javaとか普通に動くみたいだからSparkとかCoherenceとか無駄に入れてみたいw
富士通は国内では数少ない世界レベルのHPC/ハイエンドサーバ向けCPUを開発できる会社なので、今のARMブームと富岳の実績で是非世界展開して欲しいです。メガクラウドに売れればワンチャンなんだけど、商売下手だからな。。。この会社。
AWS Graviton
GravitonはAWSのEC2で利用できるサーバ向けARM CPUです。CortexではなくNeoverse N1というサーバ向けのIPをベースにしています。
v1は低スペック向けとして登場させましたが、Graviton 2は性能を大幅に強化しデータベースのような重たいワークロードも含めてArm v8.2準拠で開発されています。int8/fp16もサポートしているためAI分野のCPUとしてもそれなりに期待が持てます。
EC2で選べる構成は以下の通りです。
- 汎用 (M6gおよびM6gd):仮想CPU数最大64、メモリは最大256GB
- コンピューティング最適化 (C6gおよびC6gd):仮想CPU数最大64、メモリは最大128GB
- メモリ最適化 (R6gおよびR6gd):仮想CPU数最大64、メモリは最大512GB
最大の特徴はSMT、つまりハイパースレッディングが無いことです。そのためこの64コアは全て物理コアとなります。SMTは完全なコア分離では無いので適切なパフォーマンスが出ないこともあります。それが全て物理でこのコア数というのは中々面白い作りですよね。また、8.2準拠なのでセキュリティ機能のTrustZoneも備えます。これによりデータを暗号化したままメモリに保持することができます。
クラウドで動くことの多いWebアプリケーションなどはCPUを気にした実装をしていることはほぼ無いでしょう。そういったニーズに低消費電力で高性能なARM CPUがいい感じにマッチする訳ですね。
ちなみに一番恐ろしいのは「彼らはGravitonをどこにも出荷していない」ということです。これは自分たちで消費するだけでCPUの開発コストはペイするという意味です。GoogleをはじめとしたメガクラウドがDC内で使うチップを自作しているのは有名な話ですが、その辺を改めて意識させられるエピソードでした。ユーザに提供するI/Fさえ変えなければクラウドベンダーは膨大なコンピュートリソースを好きに組み替えれるので、今後は彼らが市場のプレイヤーになってきます。他の企業の動向も気になりますね。
Ampere Altra
ARMベースのメニーコアのAmpere Altraです。大変ややこしいですがNvidiaの新GPUのAmpereとは何の関係もありません。紛らわしい。。。
AmpereはAltraを世界初のクラウドネイティブプロセッサと呼んでいます。クラウドネイティブプロセッサはクラウドのワークロードに合わせて「予測可能な性能」「ハイパースケール」「低消費電力」を上げています。確かにどれもクラウドでは重要な要件です。
まず予測可能な性能とハイパースケールを実現するためにAltraは3GHzの80コアのCPUです。Gravitonと同じくSMTを使わずに実現しています。AMD EPYCですら64コアなのでヤバイですね⭐︎
Garvition同様にARMv8.2準拠です。AltraもNeoverse N1をベースにしているので基本的な設計は似ているのだと思います。
2基の128bitのSIMD、各コアに1MB大きなL2キャッシュメモリとチップあたり32MBのL3キャッシュ、AI向けに8bit整数と16bit浮動小数の強化、メニーコアに強いインターコネクトのメッシュ構造、セキュリティ機能とサーバ向けとして十分なスペックを持っています。
そして、このコアではシングルスレッドのみが動作することを強調して説明しています。SMTを使わないのでクラウドや仮想環境で起こりやすいノイジーネイバー問題を極力減らすことができますし、Spectre/Meltdownのようなサイドチャネル攻撃にも強くなります。また、性能面でもクラウドのようなマルチテナンシなワークロードではキャッシュの効果も薄いためHTは性能劣化に繋がるという点を強調しています。また、HTを持たない分IO Waitを減らすためにキャッシュ周りを強化していると思われます。これは確かにクラウド環境を意識したCPUと言えるでしょう。
現段階でもEPYC 7742に匹敵、あるいは部分的には超える性能を発揮します。消費電力周りもいろいろ考えられていて、2020Q4か2020の早くには Ampere Altra Maxという128コアのCPUも予定されています。ヤバイですね⭐︎
Marvell ThunderX3
MarvellはThunderXというARM CPUを作っている会社です。元々、Caviumという会社で開発されていましたがMarvellに買収されました。現在の最新版はThunderX2です。
ThunderX2は既に出荷されているサーバ向けARMなので最も入手しやすいでしょう。クロックは 2.5 GHz から 3.0 GHz。1コア4スレッド、最大32コア搭載可能ということでワンチップで128スレッドが動作します。スレッド数でみれば EPYC 7742と同じですね。発売日はもっと前ですが。ARMv3.1準拠となります。ちなみにHPEの次世代メモリドリブン型コンピュータ、所謂 the Machineのデモ機にも使われています。
また、第三世代としてThunderX3もアナウンスがされました。
これは96コア、384スレッドという他社の追従を許さない圧倒的なメニーコアを実現します。またアーキテクチャバージョンもARMv8.3+になります。サンプル出荷は2020Q4頃と言われています。 現時点ではあまり詳細はあまりありませんが、ThunderX2の方向性を正統進化させたものになるようです。特にSIMDの強化で浮動小数計算が向上していてHPCやAIをある程度見据えた結果かもしれません。
ref: Marvell ThunderX3 Arm Server CPU with 768 Threads Per Node in 2020
ThunderXシリーズの最大の特徴は先ほど紹介した2つのCPUとは異なりNeoverse N1では無いので、SMTが可能なことです。これはむしろNeoverse E1に近い構成です。
ハイパースレッディングのメリットはI/O待ちで発生するストールと呼ばれる空き時間を削減することです。見かけ上の数を増やして待ち時間でパイプラインの空いてるところを埋めてコアの効率性を高めることが基本的な目的になります。
ThunderXでは現在のワークロードはI/Oヘビーのものが多くCPU律速になることは少ないのでHTを4つ持つことで性能を上げるという戦略をとっています。クラウドネイティブなアプリケーションは小さなワークロードの集合なのでCPU性能を上げるより数をこなせることがスループットの向上になるというコンセプトです。
これはNeoverse N1を選択した先の2つのCPUが述べるようにマルチてナンシーのワークロードではセキュリティや性能の面で不利になるケースもあります。なので、ThunderXは単純にIaaSの基盤というよりはある程度上で動くワークロードが占有される大規模アプリケーション、例えばHPCやビックデータ処理、あるいはSDN/NFVなどのネットワーク基盤をターゲットにしてるのでは無いかと予想されます。
ちなみに2020/06のTop500にはA64FX以外では唯一のノミネートとなります。
Astra - Apollo 70, Marvell ThunderX2 ARM CN9975-2000 28C 2GHz, 4xEDR Infiniband | TOP500
HPEにより開発されたAstraは1.8 PFlopsと上位陣に比べると100倍以上性能が低く見えますが、それでも244位と真ん中くらいの性能は維持しています。この辺りのレンジのHPCは構成要素がサーバとも近いので、立ち位置としては悪く無いのでは無いかと思います。
Opteron(K12)
Opteron(K12)はAMDの次世代ARM CPU(2017年当時)です。2017年には出る予定でしたが未だ姿を見たものはいません。
既に、Opteron A1100としてサーバ向けチップは持っていますが、これはCortex-A57をカスタマイズしたものです。K12はマイクロアーキテクチャを刷新すると言われておりRyzenやEPCYにも利用されているZenアーキテクチャが使われる予定だったという噂です。
つまり、x86とARMのISAで同じマイクロアーキテクチャを使う見込みだったわけですね。実現していれば富士通の戦略とも似て居てとても面白いと思います。
歴史の結果としてはRyzenとそのサーバブランドであるEPYCが馬鹿売れしたので、リソースの選択と集中の観点からもK12は無くなってしまったようです。他のARMチップとはマイクロアーキテクチャが大きく異なる可能性があったので、ちょっと残念ですが、また構想が復活してくれる事を祈ります。
ARMの今後とサーバ向け需要
ARMはスマホ市場は既に制しており、ここには大きな成長は無いと言われています。そのため、サーバ市場やHPC市場、あるいはノートパソコンやPCに可能性を見出しています。
歴史に的にこの挑戦は何度かされましたが、結果としては大きな成功は得られていません。ノートパソコンもChromebookやNetbookで多少の市場はあるもののChromebookですらハイエンドはIntel CPUです。
ただ、ソフトウェアスタックの進化やクラウドの推進によりCPU ISAの価値は大きく変わりました。いまはItaniumが出た時代とは違います。AWSという巨大市場で性能の高いサーバ向けARMがサポートされた事も大きなターニングポイントです。Macのアップルシリコンや実はこっそり出てるSnapdragon対応のWindowsマシンがハイエンドでもARMという事を後押ししてくれます。富岳のスパコンランキング世界一という実績も低スペックへの懸念を払拭してくれるでしょう。
というわけで、今はかつて無いほど流れは来ているので、このままPC及びサーバ向けの市場に広がるかが今後の分水嶺になるかと思います。
今後、サーバ用途にも少なからず入ってくればARMの未来も明るいですが、RISC-VやオープンソースとなったMIPSも控えています。x86からARMに切り替える事ができたらば、その他のCPUに切り替えることも出来てしまうので今後がどうなっていくか本当に楽しみです。特に富士通のA64FXは日本発のCPUということもあるし、スペックは高そうに見えるのでHPC以外にも売れてくれないかなーと個人的には興味津々です。
まとめ
ARMがスパコン市場でもPC市場でもIntelの牙城を崩しつつあるのはは本当にすごい事だと思います。特に富岳が1位を取れたのが嬉しくて勢いで記事をまとめて見たのですが、結構調べながら書く事が多くて思いの外時間を使ってしまいました。結果的にARMの勉強になったので良かったです。
ちなみに、組み込みからスパコンまで使われてるARMアーキテクチャですが、他にも同じように広範囲に使われてるCPUアーキテクチャはあるでしょうか? 実はあるんです。それはx86とMIPSとPowerです。有名どころって大体そうなんですよね。みんな同じアーキテクチャでどこまで行けるかという勝負になるので、シェアの大小はあっっても実績だけは少なからずあったりします。
それではHappy Hacking!