Oracle Exadataは分散システム?
- はじめに
- Oracle Exadataとは?
- Oracle RAC(Real Application Clusters)とは?
- ExadataとSmart Scan
- ExadataとRACと分散ストレージ
- まとめ
- 参考
はじめに
最近、Oracle Exadata/RACを触る機会がありました。
個人的にはOracle RAC自体まともに触るのが初めてだったので、お約束のキャッシュフィージョンを起こして性能が出なかったりとか、RAC初心者あるあるを起こしたりもしました。
その時に、ExadataやRACの公開情報をあらためて見てたのですが、Exadataは分散システムとして理解したほうがしっくりくるなぁ、という事に気付きチューニングもその観点を持ったほうが良い気がしたので、少しまとめてみました。
Oracle Exadataとは?
Exadataは簡単に言えばOracleが考えた「僕が考えた最強のRDB」です。
RDB製品としてトップクラスの実績を誇るOracle Databaseとそのクラスタ構成であるRAC(Real Application Clusters)をボトルネックなく最速で動かすための当代最速のマシンで組み上げたアプライアンスです。
各ノードはInfinibandという40Gbpsを誇る高速な回線で、TPC/UDPよりもオーバーヘッドが小さいRDMAを採用。ストレージもSSDマシマシでメモリもたくさん載せる。CPUは当然大量に。というRACのボトルネックになりそうなところをキチンとつぶした構成になっています。
加えて、ソフトレベルで色々チューニングが施してあって、単に同じハードでOracle Database Enterprise Editionを実行するよりも数倍速いってのが特徴です。
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Exadata Database Machine | Oracle
まあ、Oracle Enterprise入れることを検討する程お金があるなら一考の余地はあるでしょうけど。あと、クラウドもあるみたい。
Oracle RAC(Real Application Clusters)とは?
Oracle RACはOracle Databaseをクラスタリングし、性能と可用性を高めるための製品です。その最大の特徴はShared Everything.
MySQLやPostgreSQLの良くあるクラスタと違ってストレージも共有してますし、キャッシュも共有しています。つまり計算するDBエンジンだけを分散化してるのが特徴です。
正直、2から数台程度のスケールだとこれが一番面倒は無さそうというのは納得です。ただ、後述する通り「厳密にはExadataの構成とは違う」ってのが注意点。
ここでRACのポイントとなるのがASMとキャッシュ。ASMはAutomatic Storage Management
の略で、その名の通りストレージの自動管理をしてくれる仕組みみたい。大分誤解がありそうだけど自分の理解としてはDB特化型のソフトウェアストレージですね。
DBで直接ブロックデバイスを扱わずにソフト的な抽象レイヤーを作る事で、耐障害性をあげたりと色々な事をする機能。これがExadataでは大活躍します。
つづいてキャッシュだけど、これの注意点はすべてのDBサーバで共有されてるということ。
つまり良くあるmemcache的な分散型キャッシュシステムとして動いてるのではなく、Netflix Hollowみたいな散在型キャッシュシステムです。
この仕組みであれば参照時のローカリティが常に保たれるため効率的ですね。半面、書き込み時にキャッシュを共有する必要が出てきます。これがキャッシュフィージョンです。
通常は、キャッシュフィージョンのコストが参照時にキャッシュヒットせずにストレージアクセスするコストより小さいという分析から、こういう仕組みになってるのでしょう。
当然、これが頻発すると性能が落ちます。特に同じキャッシュの場所を更新するとコンフリクトの解決が必要になるので目に見えて遅くなります。
私のようにRAC構成のOracleが分散システムであるという事を忘れてInsertをしまくると痛い目を見ます。ただ、解決方法もあってハッシュパーティションとかでDB上の更新箇所を散らしてやるのが効果的です。このあたりのチューニング方法は下記の記事が分かりやすかったです。
ExadataとSmart Scan
Exadataの最大の特徴といえばSmart Scanでしょう。下記の記事が詳しいです。
Smart Scanを簡単に言ってしまえば「インデックスを張らずにフルスキャンをしても高速にレスポンスを返す」ための仕組みです。
どやってるかというと発想は単純で、ストレージサーバ側で簡易な検索を行いデータを小さくした後にDBサーバに返してDBサーバ側でJOINなど複雑な処理をする、というものです。
これによってInsert時のIndexにまつわるコストを大幅に下げつつ、性能を上げることが出来ます。
引用: Oracle Exadataはなぜ速い?圧倒的なパフォーマンスの秘密を徹底解剖
データが大きくなればなるほどストレージからDBサーバにデータを持ってくる通信コストは無視できなくなりますし、分散してりるストレージサーバ上で処理すればビックデータに対しての性能が稼ぎやすくなります。
このあたりはHadoopやGoogleのBigQueryと近しい思想だと思います。
さすがにPKとかでKey Valueで採ってこれるような処理よりは遅いみたいですが、バッチシステムとかだったら十分効果ありってのがOracle側の見解です。
さて、この辺のExadataの記事見てたら気づくと思うのですがRACの説明と大きく違うところがあります。そう、ストレージが1個じゃねーじゃん、と。
ExadataとRACと分散ストレージ
RACの特徴はShared Everythingでストレージが1つしかないことです。しかし、RACを採用してるはずのExadataの特徴は複数のストレージサーバに処理をオフロード出来ることです。この差は何でしょうか?
色々あるのですが「Exadataで動いてるシステムは厳密にはRACじゃない」と理解しておくのが一番楽そうです。RACをベースとした「クラスタシステム:Exadata」と思っとく方が無難ですね。
たしかに、RACはソフトウェアにすぎませんし、そこから見る単一のストレージシステムってのは「ASMで抽象化されたストレージ」くらいの意味しかないと思います。
その先がNASやSANであれば「個人向けのNASのようにハードディスクを直結した単一にぶら下がるストレージ」であろうが、「GlusterFSのような分散ストレージ」であろうがどちらであっても「単一のストレージ」です。OracleやEMCのNASやSANも中身が複数台で構成されてるってのは普通にあるでしょうし。
DBエンジン毎に違うストレージが刺さってないってのがポイントでしょう。Exadataはその構成上、分散ストレージになってると思いますがそれだけであればASMが頑張れば良いだけです。
ただ、SmartScanを考慮すると話が違います。どんなにASMが頑張ってSQL処理だけ特別な処理をするように透過的に要求を処理しても、selectの結果として返ってくるレコードの量が減ってるとかDBエンジン側でも考慮しないとストレージのバグとして処理される気がするんですよね。
このあたりは同じEngineered製品であるBig Data Applicanceと組み合わせた時の振る舞いが顕著です。
BDAにはOralce Big data SQL
という面白い機能があって、これはExadataのSmartScanからExadataのストレージサーバのようにHadoop(Hive)を取り扱うものです。
引用: Why Oracle Big Data SQL Potentially Solves a Big Issue with Hadoop Security
この際、OracleのDatabaseサーバ側からみると、ExadataのストレージサーバもBDAのHadoopノードのも等価として扱われるとのことです。
その意味でもSmartScanとそれにまつわる仕組みは単一ストレージとして考えず、分散システムとして考えた方がしっくりきます。
まとめ
Exadataはアプライアンスなので単一システムとして売られていますが、本質的には分散システムでありHDFSのような分散ストレージを使った製品であると理解したほうが良さそうです。
Netfix hollowやHDFSに似てるところがあるからこんな感じの理解ですかね?
こうしてみると商用RDBの最先端であるOracle DatabaseもAWS Auroraを始めとしたNewSQLと同じような方向性の進化を進めてることが良くわかります。
アプライアンスはハードウェアも込みでアーキテクチャが練られてるところが良いですね。
この辺はOracleがSunを買ったメリットの一つかなぁ。HPには災難だろうけど自社で完結するほうが良いよね。
それではHappy Hacking!