分散バッチフレームワークとしてのApache Spark

ヌラーボさんのGeeks Who Drinkで分散バッチフレームワークとしてのApache Sparkというタイトルで話させていただきました。 nulab.connpass.com

資料はこちらになります。 Apache Spark as Batch

最近、Sparkを触り始めたんですが、世の中の資料は機械学習やログ解析がほとんどで、普段作ってるようなジョブをあんまりどう書くかが議論されていません。 ただ、SparkのAPIScalaのコレクションAPI。つまり、map/reduce/filter/foreach/groupby等による普通の近代的なコレクション操作APIです。 なので、普通の業務バッチで長時間掛かってるはずやつにも適用できるはず、という観点でこの資料を作ってみました。

個人的にはSparkおよびHadoopシステムはバッチシステムとしての完成度というか作りこみが凄く、管理系の機能が豊富なのでそこまでビックなデータじゃなくても基盤として有用だと考えています。

また、今回はあまり触れてませんがJavaからもふつうに使うことが出来るので、ScalaエンジニアがいなくともJavaエンジニアだけで開発できることも大きなポイントですね。

アクティブアクティブでスケールアウトするバッチサーバを検討中なら多少オーバーヘッドがあることを加味してもありだと思いますね。 DAGの可視化と各処理の実行時間がわかるのはかなり便利だし。

ただ、新しいミドルの運用という別タスクが増えるので、このトレードオフがペイするかは要件等ですね。

ちなみに、他の発表でWebクリエイターボックスの@chibimanaさんがリモートワークについて話されてました。 リモートワークとは少し違いますが、離れた拠点と仕事することは多いので、なるほどなー、と感じることも多くてとても興味深い話しでした。

あと、LTされたKAGURAっていうソフトがかなり面白そうでした。 私も音楽センス0なので、そんな私でもそれっぽい演奏ができるんだろうか? という夢と、MIDIがつながるのでジェスチャーで色んなデバイスを触るためのUIとしても 使えるんじゃないかなー、とおもったり。というわけでbackingはしてみました。ワクワク

Geeks Who Drinkは勉強会というわけではなく、食べ飲みだべりメインでなんかあれば発表もする、というスタイルみたいですね。 これはこれで面白いので、機会があればまた行ってみたいなー、と思います。

それではHappy Hacking!

参考:

書き初めコーディング! Docker + CGI + COBOLな環境を作って温故知新

さて、今年の書き初めコーディングは「温故知新」ということで、古いものと、とても古いものと、最近のものを組み合わせてみました。 というわけで、CGI + COBOL + Dockerという異色組み合わせをしてみました。エンジニアは「最新の技術」ではなく「最適な技術」を押さえる必要があるので、どっちも使ってみないとです。

とりわけ「CGI」は忘れ去られた便利仕様だと思っています。「CGI」と聞くと多くの人は「Perl」「PHPの前の技術」「RailsとかJavaServletのことでしょ?」と色々なイメージがあると思います。 Webアプリケーション黎明期を支えた技術であり、今となってはPHPRailsJavaEEに取って代わられた技術です。

しかし、「CGI=Perl」というわけではありません。CGIは「Common Gateway Interface」。その名の通り、Apacheと外部システムを連携させる「共通仕様」であり、 標準入力と標準出力を備えた言語...いえ、実行可能モジュールなら、なんでも動きます。Perlはもちろんですし、JavaRuby, あるいはC言語Bash、そしてCOBOLおばあちゃんだって大丈夫です。

単なる標準入出力のフックなので、JNIとかより圧倒的に手軽で、LinuxコマンドにWeb I/Fを付けるなど、多くの場面で役立ちます。

そして、今回のターゲットは古代言語の代表格「COBOL」! Linux実装にはOpenCOBOL(現GnuCOBOL)を使います。 さらに、これらをDockerに包んでどこでも使えるポータブルなCOBOLのREST環境を作ります。

まずはこちらに出来たものが。

github.com

環境としてはDocker Toolboxが入ってることを前提としています。Windowsで利用する場合はVolume周りを修正してください。

まずは単純にCOBOLのHello Woldを実行してみましょう。

000100* HELLO.COB GNU Cobol FAQ example
000200 IDENTIFICATION DIVISION.
000300 PROGRAM-ID. hello.
000310 DATA DIVISION.
000320 WORKING-STORAGE SECTION.
000400 PROCEDURE DIVISION.
000500     DISPLAY "Hello, World!".
000600     STOP RUN.

ことごとく最近はやりの言語と語彙が被ってませんね! とは言え読めばわかる通り「DISPLAY」が表示です。あとは全部オマジナイです(ぉ

実行はdockerでやります。

$ git clone https://github.com/koduki/example-cobol.git
$ cd example-cobol
$ docker-compose run app cobc -x -o bin/HELLO ./src/cobol/HELLO.COB 
$ docker-compose run app bin/HELLO 
Hello, World!

Dockerはデーモン(サービス)のコンテナとして使うのが通常だとは思いますが、こういうインタラクティブなコマンド実行にも使えるので、その用途も結構便利だったりします。

続いて、CGIとして実行します。

$ docker-compose run app cobc -x -o bin/APP ./src/cobol/APP.COB 
$ docker-compose up

APP.COBはCGI用に書いたCOBOLで下記のような形をしています。見よう見まねで書いてみたので、COBOLっぽくなかったらごめんなさい。

000100 IDENTIFICATION                     DIVISION.
000200 PROGRAM-ID.                        APP.
000300 DATA                               DIVISION.
000400 WORKING-STORAGE                    SECTION.
000500 01 ARG1                            PIC 9(2).
000600 01 ARG2                            PIC 9(2).
000700 01 RESULT                          PIC 9(4).
000800 PROCEDURE                          DIVISION.
000900 ARGS-INPUT                         SECTION.
001000      ACCEPT ARG1 FROM CONSOLE.
001100      ACCEPT ARG2 FROM CONSOLE.
001200 MAIN                               SECTION.
001300      COMPUTE RESULT = ARG1 + ARG2.
001400 JSON-OUTPUT                        SECTION.
001500      DISPLAY "{arg1:" ARG1 ",arg2:" ARG2 ",result:" RESULT "}" .
001600 JSON-FIN                           SECTION.
001700      STOP RUN.

ACCEPTが標準入力です。標準出力にはJSONを返しています。

ここで、CGIに詳しい方なら「あれ?」と思ったはずです。 そう、このCOBOLCGI仕様ではありません! (ぉ

ここで、少しCGIのI/Fを説明します。CGIはかなり単純で、出力が下記フォーマットなら、なんでもHTTPに乗せることが出来ます。

Content-type: text/html # text/planとかもOK
# 改行
# 本文

Content-typeを書いて、改行して、本文を入れるだけ。実にシンプル。なのですが、何故かCOBOLで書いたらうまく動きませんでした... 謎ですが、仕方が無いので、以下のようなBashで包んで、Conetent-type部分を補完しています。

#!/bin/bash

args=($(echo $QUERY_STRING|sed s/\&/" "/g|sed s/=/" "/g))

### cgi
echo "Content-type:application/json"
echo

echo -e "${args[1]}\n${args[3]}" |/app/bin/APP 

単純に、echoでContent-typeと改行を出力しているだけです。 GETパラメータなどはQUERY_STRINGという環境変数に渡されるので、そちらを分解して標準入力としてCOBOLに渡しています。

これで準備は整ったので、ブラウザで下記URLにアクセスしてみましょう。 ※ docker-machine ip が 192.168.99.100 の場合

http://192.168.99.100/app.cgi?arg1=3&arg2=2 

ちゃんと、足し算の結果が返ってきましたね? ちなみに性能としては特にチューニングしなくても1秒あたり100リクエスト程度の性能でした。 コネクション数を増やしても性能が上がらなかったので、Apache側でシリアライズされてる気がしますが、これはちゃんとチューニングすれば問題ないでしょうし、 Linuxコマンドや特殊な言語で書いたプログラムをAPI的に呼びだすだけなら、まあ十分な性能な気もします。

これで、どこでもCOBOLライフを楽しめるようになりましたね! あれ? 全然嬉しくないのはなんでだろう...

ちなみに今回は試しませんでしたがCGIは単純にApacheの1機能として振る舞いますので、HTTP2とかも動かすことができる気がします。 さすがに、Websocketは難しいでしょうけど。こういう既存のノウハウが活かせるところもCGIの良いところですね。

運用系コマンドのWeb I/FにもBashベースで作ればかなり向いてる気がします。

ただし、1点注意があって、社外からアクセスできる場所に置くときには十分に注意してください。Bashがその筆頭ですが、Webで鍛えられてないので脆弱性の塊です。ご利用は計画的に。

というわけで、古い技術の中にも便利なものはあり、新しいものと組み合わせることで更に生きる、ということを胸に今年も頑張りたいと思います!

それでは今年も、Let's Hacking!

さよならスティッキーセッション!PayaraでJavaEEでもセッションをKVSに。

この記事は Java EE Advent Calendar 2015 の 9 日目です。 昨日は btnrouge さんの「Payara Microのからくり」でした。

意図せずしてPayaraネタ連続です。

はじめに

Payara MicroはSpringBootやWildfly Swarmあるいは一日目に紹介されていたKumuluzEEと同様にJavaEE向けマイクロサービス環境です。 javaコマンドで単純に実行できるDockerフレンドリーな奴ですね。

先に上げたMWと一番の違いはPayara MicroはEJBを組み直してfat-jarを作るわけではなく、最小構成のコンテナでwarをデプロイして動かす、ということです。 具体的には下記のようなコマンドで実行します。

$  java -jar payara-micro-4.1.1.154.jar --deploy example-payara_micro.war

payara-micoro.jarがシンプルに起動だけする感じですね。単一jarでは動かないとい点はありますが、ギャップが小さい分、不具合が圧倒的に少ないですね。 Wildfly Swarmなんかは色々アグレッシブな分、まだ安定してない感じがしますが...

通常のwarと開発方法が同じなので、開発時はNetBeans + Payaraで作って実行時はPayara Microみたいな開発が楽な気がします。

さて、そんなPayara Microですがもう1点重要な点として、JavaEEの特徴の一つであるスティッキーセッションを要求されません! GlassFishを始め、JavaEEではインメモリセッションレプリケーションが基本になっており、原則同じサーバへのアクセスが要求されます。 しかし、PayaraではKVSであるHazelcastを組み込んであるため、どこのサーバへのアクセスも透過になるのでスケールアウト構成がシンプルに構築できます。

LL系だとKVSにセッションを格納するのは珍しく無いですが、JavaEEだとOracle Coherenceを担ぎ出す必要があったので大きな一歩ですね。JCacheはHTTP Sessionをカバーする仕様ではなさそうですし。

準備

下記からbootstrapになるpayara-microのjarファイルを落とします。現時点での最新版は下記からダウンロードしてください。

www.payara.fish

実践

それでは実際に試していきたいと思います。まずは、mavenプロジェクトで今回は作成したpom.xmlは下記の通り。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<project xmlns="http://maven.apache.org/POM/4.0.0" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xsi:schemaLocation="http://maven.apache.org/POM/4.0.0 http://maven.apache.org/xsd/maven-4.0.0.xsd">
    <modelVersion>4.0.0</modelVersion>

    <groupId>cn.orz.pascal</groupId>
    <artifactId>example-payara_micro</artifactId>
    <version>1.0-SNAPSHOT</version>
    <packaging>war</packaging>

    <name>example-payara_micro</name>

    <properties>
        <endorsed.dir>${project.build.directory}/endorsed</endorsed.dir>
        <project.build.sourceEncoding>UTF-8</project.build.sourceEncoding>
    </properties>

    <dependencies>
        <dependency>
            <groupId>org.projectlombok</groupId>
            <artifactId>lombok</artifactId>
            <version>1.16.6</version>
        </dependency>
        <dependency>
            <groupId>javax</groupId>
            <artifactId>javaee-web-api</artifactId>
            <version>7.0</version>
            <scope>provided</scope>
        </dependency>
        <dependency>
            <groupId>fish.payara.extras</groupId>
            <artifactId>payara-micro</artifactId>
            <version>4.1.152.1</version>
            <scope>provided</scope>
        </dependency>
    </dependencies>

    <build>
        <finalName>example-payara_micro</finalName>
        <plugins>
            <plugin>
                <groupId>org.apache.maven.plugins</groupId>
                <artifactId>maven-compiler-plugin</artifactId>
                <version>3.1</version>
                <configuration>
                    <source>1.8</source>
                    <target>1.8</target>
                    <compilerArguments>
                        <endorseddirs>${endorsed.dir}</endorseddirs>
                    </compilerArguments>
                </configuration>
            </plugin>
            <plugin>
                <groupId>org.apache.maven.plugins</groupId>
                <artifactId>maven-war-plugin</artifactId>
                <version>2.3</version>
                <configuration>
                    <failOnMissingWebXml>false</failOnMissingWebXml>
                </configuration>
            </plugin>
            <plugin>
                <groupId>org.apache.maven.plugins</groupId>
                <artifactId>maven-dependency-plugin</artifactId>
                <version>2.6</version>
                <executions>
                    <execution>
                        <phase>validate</phase>
                        <goals>
                            <goal>copy</goal>
                        </goals>
                        <configuration>
                            <outputDirectory>${endorsed.dir}</outputDirectory>
                            <silent>true</silent>
                            <artifactItems>
                                <artifactItem>
                                    <groupId>javax</groupId>
                                    <artifactId>javaee-endorsed-api</artifactId>
                                    <version>7.0</version>
                                    <type>jar</type>
                                </artifactItem>
                            </artifactItems>
                        </configuration>
                    </execution>
                </executions>
            </plugin>
        </plugins>
    </build>

</project>

基本、JavaEEベースのものですね? 続いてコードになります。せっかくなので、CDIのSessionScopeを使います。

@Data
@Named
@SessionScoped
public class User implements Serializable{
   String name;
   int age;
}

リクエストを受け取り、CDIをバインドするJAX-RSサービスは、StatelessBeansで作ります。

/**
 * REST Web Service
 *
 * @author koduki
 */
@Path("session")
@Stateless
public class SessionResource {

    @Inject
    private User user;

    /**
     * Creates a new instance of SessionResource
     */
    public SessionResource() {
    }

    @GET
    @Produces(MediaType.APPLICATION_JSON)
    public String get() {
        String version = "2.0";
        String msg = "Application version " + version + System.lineSeparator();
        msg += String.format("I am %s. I am %d years old.", user.getName(), user.getAge());
        return msg;
    }

    @GET
    @Path("update/{name}")
    @Produces(MediaType.APPLICATION_JSON)
    public User update(@PathParam("name") String name, @QueryParam("age") int age, @Context HttpServletRequest request) {
        user.setName(name);
        user.setAge(age);

        return user;
    }
}

では、こちらを動かして見ましょう。

$ mvn package
$ java -jar  java -jar payara-micro-4.1.1.154.jar --deploy target/example-payara_micro.war
[2015-12-09T07:19:25.856+0900] [Payara 4.1] [INFO] [NCLS-CORE-00087] [javax.enterprise.system.core] [tid: _ThreadID=1 _ThreadName=main] [timeMillis: 1449613165856] [levelValue: 800] Grizzly Framework 2.3.23 started in: 33ms - bound to [/0.0.0.0:8080]
.
.
Members [1] {
    Member [192.168.99.1]:5901 this
}
]]
.
.
[2015-12-09T07:19:39.340+0900] [Payara 4.1] [INFO] [] [PayaraMicro] [tid: _ThreadID=1 _ThreadName=main] [timeMillis: 1449613179340] [levelValue: 800] Deployed 1 wars

Deployed 1 warsになれば完了です。

途中、Membersと出ているところがHazelcastのクラスタです。 これは、マルチキャストグループで範囲が指定されていて自動的にひっかけてきます。 登録作業がいらないのでDokcerとかでダイナミックにインスタンスが増減しても、問題にならないのはいいですね。

では、検証コマンドを。ブラウザだと確認が面倒なのでcurlで実施しました。

$ curl -c cookie.txt -b cookie.txt -i http://localhost:8080/example-payara_micro/webresources/session
HTTP/1.1 200 OK
Server: Payara Micro #badassfish
Set-Cookie: JSESSIONID=3ccb47b039bb17f872d2216c9cde; Path=/example-payara_micro; HttpOnly
Set-Cookie: JSESSIONIDVERSION=2f6578616d706c652d7061796172615f6d6963726f:0; Path=/example-payara_micro; HttpOnly
Content-Type: application/json
Date: Tue, 08 Dec 2015 22:53:29 GMT
Content-Length: 52

Application version 2.0
I am null. I am 0 years old.

最初は、セッショに何も値が入ってないのでnullが返ります。続いて値の登録して、結果を確認して見ます。

$ curl -c cookie.txt -b cookie.txt -i "http://localhost:8080/example-payara_micro/webresources/session/update/Nanoha?age=9"
HTTP/1.1 200 OK
Server: Payara Micro #badassfish
Set-Cookie: JSESSIONIDVERSION=2f6578616d706c652d7061796172615f6d6963726f:1; Path=/example-payara_micro; HttpOnly
Content-Type: application/json
Date: Tue, 08 Dec 2015 22:55:24 GMT
Content-Length: 25

{"age":9,"name":"Nanoha"}%

$ curl -c cookie.txt -b cookie.txt -i http://localhost:8080/example-payara_micro/webresources/session
HTTP/1.1 200 OK
Server: Payara Micro #badassfish
Set-Cookie: JSESSIONIDVERSION=2f6578616d706c652d7061796172615f6d6963726f:2; Path=/example-payara_micro; HttpOnly
Content-Type: application/json
Date: Tue, 08 Dec 2015 22:55:57 GMT
Content-Length: 54

Application version 2.0
I am Nanoha. I am 9 years old.

まずは、セッションが想定どおりに動いているのが確認できました。続いて、もう一つ立ち上げます。

$ java -jar ~/Downloads/payara-micro-4.1.1.154.jar --deploy /tmp/example-payara_micro.war --port 8180
Dec 09, 2015 7:57:46 AM org.glassfish.security.services.impl.authorization.AuthorizationServiceImpl initialize
.
.
Members [2] {
    Member [192.168.99.1]:5901
    Member [192.168.99.1]:5903 this
}
]]
.
.
[2015-12-09T07:58:06.839+0900] [Payara 4.1] [INFO] [] [PayaraMicro] [tid: _ThreadID=1 _ThreadName=main] [timeMillis: 1449615486839] [levelValue: 800] Deployed 1 wars

今回は同一サーバに複数個立ち上げるのでポートを変更してあります。 また、Membersに新しく追加されたのが確認できるかと思います。

では、新規に立ち上げた方のサーバにアクセスしてみます。

$ curl -c cookie.txt -b cookie.txt -i http://localhost:8180/example-payara_micro/webresources/session
HTTP/1.1 200 OK
Server: Payara Micro #badassfish
Set-Cookie: JSESSIONIDVERSION=2f6578616d706c652d7061796172615f6d6963726f:3; Path=/example-payara_micro; HttpOnly
Content-Type: application/json
Date: Tue, 08 Dec 2015 23:01:07 GMT
Content-Length: 54

Application version 2.0
I am Nanoha. I am 9 years old.%

nullではなく、適切にレプリケーションされた値が入ってることが確認できました! これでラウンドロビンでアクセスができますね!

Docker対応

やはり、この手のものはDocker経由で使いたいので、Dockerでの動きを検証してみました。

github.com

上記のDockerファイルを元に作成して、問題なく動作しました。

少なくとも同一ホストであれば、特になんの設定もしなくても Docker間でのマルチキャストによるディスカバリも含めてセッションレプリケーションも問題なく動作しました。

複数グループ

複数のセッション/クラスタグループを作るには、マルチキャストグループを変更することで可能です。

payara-microの場合は、IPが224.2.2.4がデフォルトのようなので

$ java -jar payara-micro-4.1.1.154.jar --deploy example-payara_micro.war -mcAddress 224.2.2.4

こんな感じで指定すればいいかと思いきや、現状では下記のようなエラーが出ます。

Dec 09, 2015 8:32:16 AM org.hibernate.validator.internal.util.Version <clinit>
INFO: HV000001: Hibernate Validator 5.1.2.Final
Exception in thread "main" fish.payara.micro.BootstrapException: PlainTextActionReporterFAILURENo configuration found for server.hazelcast-runtime-configuration
    at fish.payara.micro.PayaraMicro.bootStrap(PayaraMicro.java:714)
    at fish.payara.micro.PayaraMicro.main(PayaraMicro.java:105)
Caused by: org.glassfish.embeddable.GlassFishException: PlainTextActionReporterFAILURENo configuration found for server.hazelcast-runtime-configuration
    at com.sun.enterprise.glassfish.bootstrap.ConfiguratorImpl.configure(ConfiguratorImpl.java:75)
    at com.sun.enterprise.glassfish.bootstrap.GlassFishImpl.configure(GlassFishImpl.java:71)
    at com.sun.enterprise.glassfish.bootstrap.GlassFishImpl.<init>(GlassFishImpl.java:65)
    at com.sun.enterprise.glassfish.bootstrap.StaticGlassFishRuntime$1.<init>(StaticGlassFishRuntime.java:116)
    at com.sun.enterprise.glassfish.bootstrap.StaticGlassFishRuntime.newGlassFish(StaticGlassFishRuntime.java:116)
    at fish.payara.micro.PayaraMicro.bootStrap(PayaraMicro.java:694)
    ... 1 more

masterでは修正されたようなので、しばらく更新を待つしかないですね。 ちなみに、マイクロじゃない方のPayaraでは問題なく動作しましたので、すぐ使いたいならそちらで。

バージョニング

今回の構成ではラウンドロビンでバランシングができるので、シンプルなリリース要件ならブルーグリーンデプロイメントで問題ないと思います。 ただし、リリース中に一切ログインさせない、不整合も起こさせないといった完全なZero-downtime Deploymentを実施するならバージョン毎に別のセッションが必要です。

しかし、現行のGlassFish及びそれをベースとしたPayaraにはアプリバージョン毎のセッション等は作成できないので、 そちらに関しては別途の仕組みの検討が要りますし、いずれにしてもスティッキー性が必要になってきます。

まとめ

今回はPayara Microでのセッションレプリケーションを確認しました。実にDocker時代と相性の良さそうな機能ですね。 将来的には、mod_mrubyと組み合わせてZero-downtime Deploymentも作ってみたいと思います。

では、明日はsusumuisさんの「Javaプログラマー12年の僕がSpring童貞卒業的なこと書きます!」です!

Happy Hacking!

参考

WildFly Swarmではじめる「パーツとしてのJavaEE」

天神LT勉強会 on ZusaarWildFly Swarmに関して話してきましたので、ブログにまとめ直してみます。

JavaEEコンテナの世界観

昔ながらのJavaEEコンテナはすべてがJavaEEで完結することを目指して作られていました。 なので、WeblogicGlassFish, WildFly等には下記のような機能があります。

あと、リソースを効率的に使うために、一つのマシンに複数のアプリを乗せる事を前提とした機能も多いです。

「同一のミドルなのでシステムはうまく結合していて、管理も簡単!」

JavaEEコンテナさえあればインフラは他には不要!」

というやさしい世界を目指してる感じなのですが、実際は

f:id:pascal256:20150708221439j:plain

「そんなのないよ、ありえない」

という感じです。

従来のJavaEEコンテナの限界

どうありえないかですが、だいたい下記のような問題があります。

  • ブルーグリーンデプロイメントとかを考えるとクラスタリング機能が弱い(URLが同じアプリを複数持てない)
  • OSを含めてJavaEE以外のシステムの監視もあるので、アラートはZabbixとか別でやりたい
  • 無停止デプロイ系は困ったちゃん(信頼するには精度が微妙で、理解するにはブラックボックス過ぎる)
  • そもそも、JavaEEだけでは完結しない(Apacheが必要だったり、ローカルファイルが必要だったり)

すべてがJavaEEで完結するやさしい世界なら他のミドルも要らないし、幸せなのですが、現実は過酷です。色々なツールを組み合わせて使ってることが多いでしょう。

当然、そうなると組合せを最適化するための支援ツールが必要になってくるのですが、それがDockerであったり、Consulであったり、あるいはOpenShiftやCloudFoundryのようなPaaSというのが現代の流れです。

個々のシステムを上記に挙げたような基盤でくっつけていく感じですね。この流れにJavaEEコンテナも統合したい。

別に、現状でも統合できるのですが、単なる実行以外の機能もたくさん付いていので、無駄に重かったり、デプロイしづらかったりと、扱いづらかったりするのが現状の課題です。

WildFly Swarm

そこでWildFly Swarmです。

これは乱暴に言えば、SpringBootのJavaEE版です。WildFlyコンポーネントと組合せて、実行可能なFat-JARを作成します。

クラスタ機能とかそういったものは一切なくなるので、Docker等とかと組み合わせて、クラスタリングやスケジューリング、デプロイなんかを考えるのが前提です。

内部的には同じくJBossプロジェクトで出しているJavaEEのテストツールであるArquillianでも使われているShrinkwrapを使ってFat-JARを作成しているようです。

WildFly 9 betaをベースとしていて、Swarm自身もAlpha3ということもあって、JSFなんかはまだ正常動作しませんが、CDIJAX-RSJPAなんかは動きます。

パーツとしてのJavaEE

WildFly Swarmを使うことで、DockerやConsulなどの複合システムでアプリケーション実行という機能を提供する「パーツ」として使いやすくなります。

結果として、JavaEEコンテナで完結するよりは複雑な構成になりますが、JavaEEとそれ以外で2重に色々なものが存在する状態よりはずっと楽になります。

似たようなアプローチとしては、GlassFishベースのPayara MicroとWebSphareのLiberty Profileがあります。

逆に、対極のアプローチが次期Weblogicに搭載される予定のマルチテナントです。同一のWeblogic複数アプリをより互いの影響を小さくした状態にして相乗りさせ、効率的に集約をする機能です。

従来のJavaEE的な考え方を追及する方向なので、そもそもJavaEEのベースになっているWeblogicとしては自然な進化の気もします。OS仮想化やDockerによるコンテナ化よりもずっと効率的でしょうし。

使い方

前置きが長くなってしまいましたが、使い方です。JAX-RS, CDI, JPA(h2database利用)を使ったシンプルなプログラムをGitHubにおいてあります

WildFlyのインストールやその他準備は不要で、Mavenがあれば動きます。NetBeansとかMavenと連携できるIDE使えば開発も楽ちんです。

まずは、特に工夫をせず、シンプルにJAX-RS, CDI, JPAを使ったコードをそれぞれ書きます。

リソースはEmployeeServiceのfindAllお読んで結果を返す感じ。

@ApplicationScoped
@Path("/employees")
public class EmployeeResource {

    @Inject
    private EmployeeService employeeService;

    @GET
    @Produces(MediaType.APPLICATION_JSON)
    public List<Employee> findAll() {
        List<Employee> results = employeeService.findAll();
        System.err.println(results);
        return results;
    }

}

サービスは単純にJPAを呼ぶだけ。

@ApplicationScoped
public class EmployeeService {

    @Inject
    EntityManager em;

    public List<Employee> findAll() {
        return em.createQuery("SELECT e FROM Employee e", Employee.class).getResultList();
    }

}

EntityはLombok使いながらシンプルなJPA

@Entity
@Data
@AllArgsConstructor
public class Employee implements Serializable {

    @Id
    @GeneratedValue(strategy = GenerationType.AUTO)
    private Long id;

    private String name;

    public Employee() {    }
}

ここまでは普通のJavaEEな書き方。

ここからが、Swarmの書き方。

まずはBootStrapになるクラスを作成。Arquillianと雰囲気にてますね。

public class Main {

    public static void main(String[] args) throws Exception {

        Container container = new Container();
        registDataSource(container);

        JAXRSDeployment deployment = new JAXRSDeployment(container);

        // set config
        deployment.getArchive().addClass(JpaResources.class);
        deployment.addResource(JaxRsApplication.class);

        // load resouces
        deployment.getArchive().addAsWebInfResource(new ClassLoaderAsset("META-INF/beans.xml", Main.class.getClassLoader()), "beans.xml");
        deployment.getArchive().addAsWebInfResource(new ClassLoaderAsset("META-INF/persistence.xml", Main.class.getClassLoader()), "classes/META-INF/persistence.xml");
        deployment.getArchive().addAsWebInfResource(new ClassLoaderAsset("META-INF/load.sql", Main.class.getClassLoader()), "classes/META-INF/load.sql");

        // load classes
        deployment.addResource(EmployeeResource.class);
        deployment.getArchive().addPackage("cn.orz.pascal.example.wilfly.swarm.domain");

        container.start().deploy(deployment);
    }

データベースの登録はこんな感じ。

    private static void registDataSource(Container container) {
        container.subsystem(new DatasourcesFraction()
                .driver(new Driver("h2")
                        .datasourceClassName("org.h2.Driver")
                        .xaDatasourceClassName("org.h2.jdbcx.JdbcDataSource")
                        .module("com.h2database.h2"))
                .datasource(new Datasource("InMemoryPersistenceUnit")
                        .driver("h2")
                        .connectionURL("jdbc:h2:mem:test;DB_CLOSE_DELAY=-1;DB_CLOSE_ON_EXIT=FALSE")
                        .authentication("sa", "sa"))
        );

        // Prevent JPA Fraction from installing it's default datasource fraction
        container.fraction(new JPAFraction()
                .inhibitDefaultDatasource()
                .defaultDatasourceName("InMemoryPersistenceUnit")
        );
    }

つづいて、pom.xmlwildfly-swarm-pluginでMainクラスを指定するのがポイント。

  <groupId>cn.orz.pascal</groupId>
    <artifactId>example-wilfly-swarm</artifactId>
    <version>0.1</version>
    <packaging>jar</packaging>

    <name>example-wildfly-swarm</name>

    <properties>
        <version.wildfly-swarm>1.0.0.Alpha3</version.wildfly-swarm>

        <maven.min.version>3.2.1</maven.min.version>

        <maven.compiler.target>1.8</maven.compiler.target>
        <maven.compiler.source>1.8</maven.compiler.source>

        <project.build.sourceEncoding>UTF-8</project.build.sourceEncoding>
    </properties>

    <build>
        <plugins>
            <plugin>
                <groupId>org.wildfly.swarm</groupId>
                <artifactId>wildfly-swarm-plugin</artifactId>
                <version>${version.wildfly-swarm}</version>
                <configuration>
                    <mainClass>cn.orz.pascal.example.wilfly.swarm.Main</mainClass>
                </configuration>
                <executions>
                    <execution>
                        <goals>
                            <goal>package</goal>
                        </goals>
                    </execution>
                </executions>
            </plugin>
        </plugins>
    </build>
  

ちなみに、NetBeans 8の組み込みMavenのバージョンは3.0.5なので実行すると下記のようなエラーがでます。 3.2以上のMavenを入れて指定しましょう。というか今時なんでこんなバージョンを...

WARNING: Error injecting: org.wildfly.swarm.plugin.PackageMojo
java.lang.NoClassDefFoundError: org/eclipse/aether/resolution/ArtifactResolutionException
    at java.lang.Class.getDeclaredConstructors0(Native Method)
    at java.lang.Class.privateGetDeclaredConstructors(Class.java:2671)

アプリケーションの実行は

$ mvn package

をすると${app-name}-swarm.jarができるので

$ java -jar ${app-name}=swarm.jar

で実行するだけです。IDEからなら単純にMainクラスを実行するだけですね。実行したら

http://localhost:8080/employees

にアクセス。中々いい感じに動きます。

まとめ

SpringBoot開発も運用も軽量で良いなー、とJavaEE派としては羨ましがってたんですが、これはなかなか良さそうです。

Dockerとの組み合わせも簡単になりますしね。とはいえ、アルファ版なので完成度とかは今後に期待。Payara Microの方が現時点の完成度は高そうだし、KVSとの連携もできるみたいだから、そっちも確認して見ようかな?

しかし、JavaEE8ではマルチテナントなんかより、こっちの機能を標準化して欲しい...

参考

Dockerってなんですか? それ、JavaEEで分かるよ。

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はじめに

最近、Dockerが大人気ですね。GoogleMicrosoftも参入してることはもちろんですが、Oracle Weblogicのサポート対象に入ってたりミドルウェア側、それもエンタープライズ系製品が対応してきたのは面白い動きです。

とはいえDockerって何?っていう人もまだまだ結構多いと思います。

Dockerとはvmwareなどの技術の先にある軽量な仮想マシンである、と捉えてもあまり間違ってないと思いますが、個人的にはJavaEEコンテナの類似品というか、それと同じ文脈で考えたほうがしっくりきました。

なので、自分の理解を深めるためにも、JavaEEエンジニアはどのようにDocker及びその周辺技術を理解すればいいのか、という視点でまとめてみました。

そもそもDockerって?

Dockerとvmwareのような従来の仮想化で何が違うかですが、vmwareがOSの仮想化をしているのに対し、 DockerはOSの上でアプリケーションとミドルウェアを仮想化するコンテナ技術です。 まあ、chrootやjailの偉いやつです。Solarisでいうところのゾーンですね。

OSレイヤーを仮想化しないので、オーバーヘッドが非常に少なく高速に動作します。 それでいて、アプリケーションの動作環境をパッケージングしてるので、 ライブラリのバージョンや依存関係を含めて競合しない形で配布できるので 開発環境と本番環境が違う、みたいな問題も従来の仮想環境同様に解決できます。

むしろ、従来の仮想環境ではそうは言っても複数台立ち上げるのはコストが高いので、 似たようなロールは同じサーバに置く運用でしたが、Dockerの場合は軽量なのでロール毎に厳密に分けるのに向いていますね。その辺が人気の秘密です。

Dockerとwarとアプリケーションのパッケージング

さて、アプリケーションを依存ライブラリも含めてパッケージングと言われると、どこかで聞いたことがある気がしますね?

そう、「war(Web Application Archive)」です。 JavaEEの場合、依存するライブラリ(jar)を含めてパッケージングし、異なるwar間での依存を切り離します。 なので、同じサーバにデプロイしていても、あるアプリケーションはバージョン1系を使い、 別のアプリケーションはバージョン2系を使うというようなケースでも、問題が起こることはありません。

JavaEEJavaとして閉じることで、これを実現していましたが、DockerはLinuxアーキテクチャで動作するものであればパッケージングが可能です。 なので、例えば「Apache + ImageMagic + Rails + アプリコード」をまとめてパッケージングする、という形になります。 デプロイもDockerコンテナに配置するだけなので、ImageMagicが無いとか、Apacheの設定が違うとかに悩まされることもなく、すぐに動作します。 この辺も、GlassFishにwarを配置するときとイメージは同じです。

JavaEEのwarと一番の違いはミドルウェアもパッケージングしちゃうところですね。 なので、JavaEEアーキテクチャで作成した、アプリをDocker化する場合はTomcatやJetty, あるいはGlassFishWeblogicごとパッケージングする形になります

DockerfileとMavenと構成管理

warを作るためには通常はMavenかGradleを使いますね? この辺を使えば、手順をコード化出来るのはもちろんのこと、依存関係も自動解決してくれて便利ですよね。

Dockerの場合はDockerfileが概ねこれに当たります。 また、依存関係の解決事態はDockerの中で使うyumだとかaptだとかのパッケージマネージャに任せるのが基本となります。

より高度なビルドをしたいときにはPackerやChef/Ansibleなんかを組み合わせるケースもあります。

MavenMavenリポジトリがあり各ライブラリを自動で落とせるように、 DockerにもDockerHubがあり必要なイメージを自動でダウンロードして使うことが出来ます。

オーケストレーションクラスタリング

JavaEEの仕様では無いですが、GlassFishWildFlyWeblogicといった一般的なJavaEEコンテナはクラスタリング機能を持っています。

これは複数のサーバを束ね、グループとして扱うことで、設定の同期やデプロイの一元化あるいは負荷分散や高可用性を提供します。

Dockerは基本的にはパッケージングに特化した技術なので、同等の機能はありませんが、SerfやConsulのようなオーケストレーションツールを使うことで実現できます。

オーケストレーションツールが何を提供するかといえば、基本的にはグルーピング(クラスタリング)とサービスディスカバリ、トリガの管理です。

詳細は後述しますが、簡単に言えばGlassFishWeblogicクラスタ機能/管理サーバを「自作するための機能」です。

残念ながら現時点でGlasFishのクラスタ機能と同じものを完成品として提供するツールは無いと思います。(使ったことがないけどGoogleのk8sはそれに当たるかも?) まあ、もうちょっと標準化されたものは今後出てくるでしょうが、根本的にインフラ構成に依存するので、 Consulをベースとした「Java + Dockerのソリューション」とか「Rails + Dockerのソリューション」みたいな感じで出てくるんじゃないかと思います。

これだけ書くと微妙ですが、クラウド、特にDockerを使うケースだとインスタンスの追加と削除を非常に頻繁に行うことになるので、 既存のGlassFishなどのクラスタ機能では不向きな部分がありますが、この点によくマッチします。

個人的にはGlassFishWeblogicクラスタ機能が微妙なので、この辺りは気になるところです。

では、クラスタリング、サービスディスカバリ、トリガ管理に関して、Consulを例に記載します。

クラスタリング

Consulでのクラスタリングは単なる名前付けです。主に後述するトリガ管理で有用な機能ですが、 Consulの場合は各クラスタに関してDNS登録をするので、単純な負荷分散はこの時点で対応できます。

サービスディスカバリ

サービスディスカバリはサービス、今回の話で言えばDockerコンテナを見つけるてクラスタに登録する機能です。

と言っても、難しいことをしているわけではなく、各DockerコンテナにConsul Agentをインストールし、 Consul Serverに起動時にリクエストを投げることで発見をします。

発見だけではなく、ヘルスチェックも提供していて、落ちれば自動的にクラスタから外されます。

トリガ管理

トリガ管理はイベントを起点に何らかの処理をクラスタに対して実行する機能です。

イベントはサービスディスカバリによりクラスタに追加されたり、削除されることはもちろん、外部から任意に実行することも出来ます。

トリガ機能を使うことで、クラスタに対するデプロイやZabbixやSensuといった監視システムに対して自動で登録削除をすることが出来ます。

上記の機能を組み合わせてGlassFishクラスタ機能や管理ツールと同等の機能を作成していくことになります。JavaEEコンテナの提供するクラスタ機能だと、当然JavaEEで完結するものにしか提供されません。

結果として、同じシステムに対してGlassFishクラスタとZabbixのクラスタが二重管理されるような形になります。Consul等を使うことでこれを集約して管理できるのは大きな利点です。

リソース管理

各コンテナが使うリソースが適切に配分されるように多くのGlassFishWeblogicでは同時にさばけるリクエスト数はDBコネクション数などのリソース制御を行います。

これと同様の仕組みはDocker単独では提供していませんが、Mesosやk8s(Kubernetes)を組み合わせて使います。このあたりは正直まだ成熟してないので、今後に期待。

フェイルオーバー

Dockerにはフェイルオーバーに類する機能はありません。こちらはDockerコンテナ内の各ミドルウェアの機能に頼ることになります。

例えばWebシステムであればセッションさえフェイルオーバーできれば基本は問題ないので、 KVSで外部に出して、各APPサーバ、各KVSサーバ自体は状態を持たないかレプリを持つのが基本となります。

JavaEEであればGlassFish, WeblogicであればCohrerence、WildflyであればInfinispanを使うことになります。 もちろんクラスタを作ってインメモリレプリケーションをすることも出来ます。

個人的にはインメモリレプリケーションJavaEEコンテナ側でするよりも、外部に取りたいのでSpring-Sessin + RedisがJSF等でも使えないか検討中です。

Immutable InfrastructureとJavaEE

Dockerそのものとは関係ありませんが、Dockerを取り巻く概念の一つにImmutable Infrastructureがあります。

これは、その名の通り、サーバなどのインフラに対して一切設定変更を行わず、修正やアプリケーションのデプロイをしたい場合はサーバごと作りなおす、という手法です。

これにより、Chefなどのように冪等性を気にせずスクリプトが作れますし、ローカルにファイルを出力するなどの状態が無いのでサーバの増減が非情に簡単になります。

もちろん、手動オペレーション + 物理サーバでこんなことが出来るはずがなく、自動構成管理と仮想化が基本になるのですが、Dockerはこの運用に非常にマッチします。

一見新しい概念なのですが、実はJavaEEは元々これを強く意識したアーキテクチャーです。

最近は出来ますが、JavaEEではトランザクションとポータビリティを意識してEJBへのローカルファイルへのアクセスは禁止でした。今は利便性のため可能ですが、やはりDBなどを使うのが基本となります。

EJBがJNDI Lookupで引いた場合、クラスタ内のどのサーバで動くか分からないため、そのような作ります。warまたはearをデプロイすればどこのサーバでも全く同様に動くのがJavaEEの基本思想です。 これって、Immutable Infrastructureと左程変わらないですよね? 当時と違いDockerはJava以外のものもパッケージングできるため適用対象が増えただけで、概念としては同様です。

なので、JavaEEエンジニアであればImmutable Infrastructureは考え方としてしっくりくるので、さほど警戒する必要は無いと思います。

まとめ

今回はJavaEEエンジニアはどのようにDocker及びその周辺技術を理解すればいいのか、という視点でまとめてみました。

Dockerやオーケストレーション、Immutable Infrastructureは非情にホットな技術で新しい用語も多いですが、 基本的には、JavaEEでも考慮されていたユースケースをより汎用的に、現代的に解決するための手段なので、 今回みたいに対応づけて考えると分かりやすいんじゃないかなー、と思います。

逆に言えば被ってる部分も多いので、機能の使い分けが重要になってくると思います。特にクラスタ周り。 Docker時代のJavaEEインフラをどう構成するのが良いのかは、なかなか面白そうなので継続して考えていきたいです。

この辺を考えると、未来のJavaEEコンテナはクラスタとかデプロイとかの運用要件を外部システムに任せて軽量なアプリケーションコンテナとして生きる道もあると思います。

また、現時点では要素技術が良くも悪くも独立していますが、Google Compute EngineのようなPublic PaaSやOpenShift 3.0のようなPrivate PaaSがPaaSという形で統合する統合する形になるかと思います。

それではHappy Hacking!

萌える瞬間英作文バージョン 0.401をリリースしました!

毎年、エイプリルフールはなんか作ろう! と画策しているのですが、今年は「萌える瞬間英作文」というAndroidアプリを作りました。

萌える瞬間英作文

萌える瞬間英作文 - Google Play の Android アプリ

さて、瞬間英作文ってご存知でしょうか?

こちらの英語上達完全マップ●瞬間英作文で触れられている英語学習方法で、簡単な英文を大量に作成することで英語を瞬時に理解・作成できるように訓練する方法です。

基本的な方法は

  1. 日本語の文章を読む
  2. 1で状況をイメージしながら、英文を作成する

となります。慣れないうちは中学1年生レベルの英語ですら、結構疲れるのですが私もこの学習方法をするようになってからTOEICが100点くらい上がったのでそれなりに効果あるんじゃないかと。 ※ 他の勉強もしてたので瞬間英作文だけの効果じゃないとは思いますけど。

この学習を進めるためにこういう本も出てますし

こんな感じのiOSアプリもあります。

ポケット瞬間英作文[中学レベル]

ポケット瞬間英作文[中学レベル]

  • BriarPatch.Co,.Ltd.
  • 教育
  • ¥500

なので、どんどん瞬間英作文を進めていくことができそうな気がするんですが、一つこの手の教材には致命的な欠点が...

というのも、英文が単調すぎたり、不自然すぎてイマイチ状況がイメージし難いんですよね。

例えば例文として出てくるのは

「私は学生です。/I am a student.」

とかなんですが、そんな事を言うシーンがあまりないので、ぱっとイメージが思いつきませんよね? イメージしながら英文を作ることが、この学習方法の最大のポイントなので、これは結構微妙です。

では、これならどうでしょう?

「ジャッジメントですの!/I am a "Judgement".」

f:id:pascal256:20150401021239j:plain

ばっちり、ドヤ顔の少女の顔が即座に浮かびましたよね? 

掲載してある英文の例としては他にも

「もう、何も怖くない/I'm not afraid of anything anymore.」
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない/My little sister can't be this cute!」
「そうそう!も~っと私に頼っていいのよ!/Yes, you can count on me more and more!」
「あぁー心がぴょんぴょんするんじゃーっ/Ah^ My Mind is hopping.」
「煩わしい太陽ね。/Good morning.」
「くおえうえーーーるえうおおお/I am Chloe Lemaire.」

こういったイメージしやすく、日常的に使える英文をとりあえず90個くらい作ってみました。

f:id:pascal256:20150401021304p:plain

文法はせいぜい中学2年生くらいで習うものなので、どんどん声に出していきましょう! ただし、英語がわかる人が近くにいるときはちょっと気を付けたほうがいいかも?

なお、英文の追加および間違いの指摘は随時募集中なので、ブログコメントかTwitter、あるいは

github.com

に直接PRいただければと思います。

それでは、Happy Hacking! And let's study English!

Meteorが見せるIsomorphicなDBとリアクティブな開発モデル

最近、Meteorを試して見てます。これはちょっとスゴイ。正直、当時Railsに受けたのと同じ興奮がある。

Meteorの説明は「リアルタイムWebアプリケーションフレームワークMeteorについて」あたりが分かりやすいので、こちら参照。

実は、2012年の公開時から存在は知ってたんだけど、チュートリアル見たくらいで特に興味はありませんでした。 しかし、今は違います。それは主にスマホアプリの開発にかなりの威力を発揮しそうだと気づいたからです。

まず、なんで公開時にあまり興味がなかったかですが、そもそもRailsなど同レイヤーのWebアプリケーションの開発FWとして考えていました。

その場合

  • SPA
  • リアクティブな開発モデル
  • クライアントとサーバを同一コード(JS)で書ける
  • サーバサイドのDBをクライアントから透過的に呼び出せる(IsomorphicなDBモデル)

という特徴はせいぜいリアクティブな開発モデルがちょっと気になるくらいで、他はさほど気になりませんでした。 むしろ、クライアントコードとサーバサイドを同一でってのは初期のASPGWTはじめ多くのFWが目指したものの、そこまで流行らなかった印象だけがありました。 リアクティブプログラミングも気にはなるものの、私が当時書いていたWebアプリはさほどUIがリッチではなかったので、修正したコードが更新ボタン押さなくても反映されるのはスゴイな、という印象止まり。

SPAにはSEOの問題もついて回りますし、ざっくりフルスタック過ぎて密結合なシステムになりそうだなーと、むしろ悪い印象。

というわけで、さほど興味を引くものではなかったのですが、Meteor + PhoneGap/Cordovaと連携して使うことで、クライアントとサーバ(クラウド)のデータ同期というかアクセスモデルを超シンプルにしてくれると気づきました。

そもそも何が問題?

スマホ開発の課題をあげよ、と言われると人によって多くの課題が上がると思いますが、その一つにサーバサイドと連携したデータアクセスがあると考えています。

いろんなケースがあるかとは思いますが、サーバサイドと連携したアプリを書くときは全体として以下の様な構成にするとことが多いかと思います。

f:id:pascal256:20150112112438p:plain

図:モデル1

このモデル1のケースでは以下の様な問題があります。

  • モデルを一致させるためにサーバサイドとクライアントサイドに類似コードが大量のボイラーコードが発生する(+ REST周りのコードが必要)
  • Server DBとClient DBの同期が困難(安定したネットワークではないため不整合の吸収が必須)

クライアントサイドにデータを一切持たず、サーバサイドに直接アクセスすることで、同期の複雑さ等は解決できます。しかし、反面ネットワークに繋がってない時は利用できず、繋がってる時もレスポンスに影響が出るので使い勝手に影響がでます。

実際のシステムモデルはともかくとして、プログラム上はこんな感じでシンプルにアクセスしたい。

f:id:pascal256:20150112112457p:plain

図:モデル2

この場合、クライアントのDBは基本キャッシュになっていて、クライアントDBへの操作を行えば、サーバサイドにも自動的に反映。モデルのメタ情報も何らかの方法でサーバサイドと同期を取っておけばボイルコードが一気に減り、やる気も上がって生産性アップ! となります。

そう、Meteorはこのモデルを実現してくれてるんです。

MeteorにおけるIsomorphicなDBモデル

Meteorがサーバとクライアントを意識しないIsomorphicなDBモデルをどのように実現しているかですが、minimongoというmongodbのJS実装を使っていて、これをクライアントのキャッシュDBとして使っています。

ユーザへのレスポンスは基本的にminimongoの結果をまず返され、それと同時に投げているサーバサイドのリクエストをバックエンドで待つ。

この時、もしサーバサイドのmongodbとクライアントサイドのminimongoの結果が違った場合は、非同期でこっそり書き換えるという仕様。

厳密なデータ一貫性が必要なケースには使えないけれど、リアルタイムなデータを表示するレポート系ツールやチャットやSNSのような場合なら基本問題無いでしょう。

また、Meteorの場合、サーバサイドがnode.jsなので当然のようにモデルが共有されます。

Meteorがサーバサイドもクライアントサイドも同一のコードで書ける、という点は単に同じコードでvalidationロジックが実行出来る、というよりもモデルの共有ができるので、サーバサイドとクライアントサイドで違うビジネスロジック部分だけを意識すれば良いという点が大きいです。

IsomorphicなDBモデルとリアクティブプログラミング

Meteorの特徴はIsomorphicなDBモデルということに加えて、リアクティブプログラミングを採用している点も大きいです。

リアクティブプログラミングはExcelのように宣言的に関係を記述することでデータの変更による再計算を自動化する開発モデル。

GUIだとデータバインディングを利用したMVVMとかがその具体的な方法の認識。

この2つを組み合わせることでMeteorはリアルタイムアプリケーション--- 言い方を変えるとユーザ関連系などサーバサイドの頻繁な更新が伴うアプリケーションを非常にシンプルに書ける。

というのも、モデル1のような通常のシステム構成でchatのようなユーザ間連携があるシステムを作る場合

  1. クライアント側の書き込みのUIからモデルに値を渡す
  2. クライアントのモデルがサーバサイドのREST/IFをコールする
  3. REST/IFから受け取った値をサーバのモデルに渡す
  4. サーバのモデルはDBに値を書き込む
  5. サーバはDBの変更を別のクライアントに呼び出すモデルを実行(WebSocketではなくクライアントがポーリングしてるならクライアントにその実装がいる)
  6. 5で呼び出されたモデルはDBから値を取得してREST/IFに渡す
  7. クライアントはREST/IFから受け取った値をクライアントのモデルに値を渡す
  8. クライアントのモデルはUIに値を渡して変更する

という感じになります。FWによって記述量が変わるところはあっても、1から8の工程を明示的に何かしら記述をしないといけません。これは単純にサーバサイドもクライアントサイドもJSで書いたからといって変わるものではありません。

対してMeteorの場合は

  1. UIからクライアントのDBに書き込むモデルを作る
  2. モデルとクライアントのDBを紐付ける(※ モデルをJSONハードコーディングじゃなくてDBの戻り値にする)
  3. UIとモデルを紐付ける

これだけです。それぞれのステップでの記述量もかなり短くなるのですが、それ以前にステップが8個から3個に減っています。

これが実現できるのはIsomorphicなDBモデルなので、各クライアントは自分たちのローカルDBへの操作だけ意識すれば良く、かつリアクティブなので、データに変更があれば、UIにも自動的に反映されるからです。

この点が開発のシンプルさを激的に改善してくれる部分です。各工程のコストを小さくするのと、工程自体が無くなるのではたとえ1秒で終わることでも人間の意識としては結構違いますしね。

まとめ

では、Meteorは万能で同様の開発モデルを採用していくべきでしょうか? 必ずしもそうではないと思います。 まず、Meteorに限って言えば未成熟な部分もあります。特にモバイル周りはUI周りが弱かったり、Cordovaとの連携にまだ不備があったりとめんどくさい部分もあります。ただ、コレは時間が解決してくれる気もします。

そうではなく、そもそもあまり向いてないケースとしては、トランザクションが厳密なケースと、既存の連携システムが多い場合です。

トランザクションが厳密であれば信頼性の低いクライアントのDBは使えず、結局常にサーバにアクセスする以外ありません。

また、このアプローチは基本的にクライアントに合わせてサーバサイドを作る場合に適したモデルなので、すでに他システムなどでサーバサイドが存在する場合にはかえって面倒になるかもしれません。

ただ、逆に言えば厳密性が重要ではなく、プロトタイプや新規アプリを開発するには非常に向いた方法だと思うので、MBaaSとの連携含めてもうちょっと研究してきたいと思います。

そもそも、AndroidiOSを前提にしたネイティブなMeteorっぽい仕組みのが個人的には嬉しいですし。

それではHappy Hacking!

参考